“何を得るにしても、悟りを得よ。”


アルツハイマー病の研究資金について

「アルツハイマー研究に費やされている支出は、現時点では20億ドル(約2183億円)前後です。2019年度の予算では、もう少し増えるはずです。それは良いことです。しかし忘れてはならないのは、アルツハイマー病患者の治療に毎年2000億ドル(約21兆8300億円)が費やされているという点です。つまり、この疾患の治療法を探す取り組みの100倍にのぼる額が、疾患の治療に費やされているわけです。ですから、まだ十分な支出とは言えないでしょう。

こうした支出が行われるだけでも、これほどの時間がかかってきた原因には、多くの問題があると思います。しかし、なかでも大きな問題として指摘されるのは、この疾患は長いあいだ、どうにもならないものだと考えられてきたことです。

さらに、別の問題もあります。ある有名な著述家の言葉を借りれば、残念ながらこの国は、高齢者のための国ではないのです。この社会で高齢者は、見えない存在のようになっています。健康な若者や、エイズ(AIDS)のような疾患を抱える若い人たちは、財源の改善を求めたり主張したりすることができますが、高齢者はそうした類の声を持っていないのです」

普遍的な病としての認知症について

「現時点でもっとも確実な推定によれば、アメリカには580万人のアルツハイマー病患者がいます。この数は、2050年までには1400万人近くにまで増えると見られています。この数は、あなたがおっしゃるとおり、イリノイ州の人口を上回ります。念のために言っておくと、イリノイ州には大都市シカゴも含まれています。

そしてアメリカ以外でも、世界中で同じことが起きています。その原因は、人口の高齢化です。今世紀末までの予測が出ています。いま生きている人たちのなかにも、少数かもしれませんが、今世紀末ころまで生きる人もいますよね? 今世紀末に、全世界のアルツハイマー病患者は3億人に達すると見積もられています。これはアメリカの総人口と同じです。認知症患者全体をひとつの国として見れば、地球上で9番目に大きい国ということになります。つまり、途方もなく大きな問題なのです。

そしてアメリカにとって、この問題は途方もなく大きな負担でもあります。現在のところ、アメリカでは認知症の治療に毎年2900億ドルが費やされています。今世紀の半ばまでには、1兆ドルを超える額に膨らむでしょう。あなたが国民皆保険制度と、完全に民営化された医療保険制度のどちらを支持していてもかまいませんが、どの医療保険制度を採ろうが、アルツハイマー病を治療し、予防し、拡大を抑える方法を見つけなければ、この疾患ひとつで破綻してしまうでしょう」

民間セクターのアルツハイマー研究資金について

「アルツハイマー病のような疾患の治療薬の開発には、5億ドルから7億ドルの費用がかかります。この点は、民間セクターが支援できます。製薬会社には、そのための資金があります。それを投資するべきです。そして、学術界にいるわれわれが、民間セクターの人たちにはたらきかける必要があります。

私がこの疾患の研究を始めたころに、特に重要なこととして取り組んだのが、ごく早い段階で民間セクターとパートナー関係を結ぶことでした。なぜなら、治療薬の開発は素人にできる仕事ではないからです。エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren:民主党の大統領候補)には申し訳ないのですが、連邦政府が製薬事業に関わるべきだという主張は、まちがいだと思います。

連邦政府は、製薬に関しては素人です。これはプロがするべきことです。そして、プロは誰かといえば、製薬会社やバイオテック企業です。そしてわれわれ研究者は、私たちが直面する現実的な真の問題に取り組むために、研究の早い段階でそうした企業と手を組まなければいけません」

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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