パタハラ訴訟相次ぐ日本。「ハラスメントは犯罪」の意識あるか?

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グレン氏は金融のプロとしても、ハラスメントを野放しにするような会社には将来性がないと分析する。

「これからは企業も、『持続可能であること』をしっかり目指すべきなんです。環境を破壊したり、妊婦さんや子供のいる社員を犠牲にしたりするような会社は、長期的に見ると有能な社員を失うことになる。それどころか、顧客も投資家も離れていきますよ。つまり、投資対象外になるんです。持続的な将来を考えて社会貢献をする企業のほうがずっと将来性があります。本来は、それが資本主義の基本であるべきなんですよね」

グレン氏は、高い意識を持つ日本企業もあると指摘する。たとえば「サッポロビール」は人権やハラスメントに敏感だし、「丸井グループ」の取り組みにもSDGsに対する志を強く感じるという。



「父親の育休義務化」というソリューション

日本が変わっていくためには、どういった変化が今いちばん必要だと思うかを、グレン氏に訊ねてみた。

「父親の育休義務化でしょうね。自然に任せると、会社では古い考え方が代々伝わっていきがちですから、義務化が必要だと思います。そうすれば何年か経てばそれが普通になるんじゃないかな」

確かに今の現状を考えると、育児休業を取得する父親が増えても、社内のルールを作っていく「幹部」になっていくのはまだまだ、育児休業を取らなかった社員である可能性が大きい。だからこそ、全員に義務化することが必要かもしれない。先述のとおり、スウェーデンでは父親が取らなければ育休のうち90日は消えてしまう。義務化されているわけではないが、そのおかげで多くの男性が育児休業を取っている。

浮上する「ダラパパ問題」?

男性の育児休暇推進においては、新たな問題も起きているという。

「『ダラパパ問題』というのが浮上しているんですよ。『ダラパパ』は、専業主婦の奥さんがいる場合に、男性も育児休暇を取った場合、家事も育児もせずに家でだらだらしている男性のことです」

その問題は、男性の育児休暇取得が一般的なスウェーデンでも聞いたことがなかった。スウェーデンでは両親が2人とも同時に育児休暇を取得できるのは、出産後2週間だけだ。「里帰り出産」の習慣もないので、その2週間は父親が家にいて家事を一手に引き受け、上の兄弟がいる場合はその面倒も見る。しかしそれ以外は、両親が同時に仕事をせずに家にいるということは珍しい。
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編集=石井節子

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