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起業家たちの「頭の中」




いまも思い出す、小学校時代の「Aさん事件」

──前田さんにとっての原動力は?

幼少期の体験です。8歳で母親が亡くなり、家もなくなり、兄とともに幼馴染の家を転々としたり外で暮らす日々を過ごしました。その頃に見ていた光景やストレスが、いまの自分を動かす原動力の一つになっているのかなと思います。絶対に、課された運命に負けるもんか。むしろこの光景をバネにして、誰より高くまで上り詰めることで、努力で運命さえ変えられることを証明してやる、と。

自分を育ててくれた兄を喜ばせたいという思いから、「学校で良い成績をとれば喜んでくれるのでは?」という仮説を持った僕は、学年トップの成績を残せるまで勉強しました。ただ、どうしても超えられなかった同級生が一人だけいました。それがAさんでした。

Aさんは算数の授業中、まだ授業では一切習っていなかった素数の話を滔々と始めるんですね。なぜその子が素数について知っていたかといえば、単純に、通っている塾ですでに習っていたからです。

それが、なんだか異様に悔しかった。後天的な努力の差で負けるのであれば納得がいくけれど、先天的な条件の違いで知識の差が生まれたり、勝敗が決まるのはおかしいと、幼心に感じました。それは違うだろうと。それが後に自分の中で、「Aさん事件」と語られる大切な思い出になりました。笑

あの時のショック、コンプレックスをいまだに思い出すことがあります。自分より機会に恵まれた人に対して、自分は圧倒的な努力で、自ら機会を創り出して勝っていかないと、過去の逆境を正当化できないまま人生が終わってしまう。だからこそ、完膚なきまでに、圧倒的に成長して勝っていきたい。それが自分の原動力です。

だから、例えば夜の喫茶店で限界まで仕事をしていると、当時の光景が思い出されるんです。ふと眠りたいと思うことがあっても、「ここで休んだらAさんに、あの子に負けてしまうぞ」って。Aさんに、感謝せねばなりませんね。

苦しい局面でもついてきてくれたメンバーを大事にしたい

──組織崩壊の危機も「原動力」で乗り越えられたんでしょうか?

そうですね。それともう一つは、本気でSHOWROOMのみんなと一緒にやりたいんですよ。SHOWROOMの事業において、彼らのスキルが物理的に必要だからやりたいといったことを抜きにして、人間的に、感情的に、本当に一緒にやりたいんです。

例えば、組織崩壊の危機に瀕した時も、メンバーには素直にそれを伝えていました。あるメンバーが辞めかけた際にも、まず何よりエモーショナルな観点で、「自分はこういう価値観で、あなたはこういう価値観。ここまで互いの価値観が共鳴するメンバーって、広い世界の中でも、そうそう出逢えない。だから、僕は、これからも何があっても原則あなたとずっと一緒にやりたい」とストレートに伝えました。

加えて、「ロジック観点であなたの価値観から逆算した将来の幸せを考えたとしても、離れるべきではない。理由は三つある。第一に…」と、ハードとソフト両面で懸命に説得したのを覚えています。きっと、何かトラブルがあった時こそ、互いが一人の人間同士として腹の底をぶつけあって、まっすぐ誠実に向き合うのが重要なんだろうと思います。そういった信頼関係を築いていけば、苦しい局面を経ても、メンバーが同じ船に乗り続けてくれる。そんな仲間を、一生大切にしたいと思います。

沸騰しそうなほど熱いモチベーションを保ち続けるための、揺るがない「原動力」はあるか。僕の場合は、それが、「運命に勝ちたい」という気持ちと、仲間の存在だったりします。それを突き詰め、日頃から自分自身に問い続けることが、起業家にとって不可欠な素養だと思います。

文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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