アップルとNASAが認めた「計測器デバイス」企業の挑戦

「Moku:Lab」(Photo by Liquid Instruments)

計測器スタートアップ「Liquid Instruments」の創業者、Danielle Wuchenichは起業した当初、宇宙研究に役立つツールを開発するつもりだった。しかし、数年が経過した今、同社のデバイスはアップルやNASA、テキサス・インスツルメンツなどの企業が、宇宙空間ではなく地球上で行うリサーチで使用されている。

Wuchenichは、オーストラリア国立大学大学院の学生だったとき、宇宙の重力波を測定するための相差計(phase meter)と呼ばれるツールを製作した。彼女は自身の研究用に定期的に電気計測を行ったが、電圧や信号周波数、信号伝送を測定するには複数のデバイスが必要で、何種類ものソフトウェアを操作する必要があった。

また、機器の価格は非常に高額だった。そこで、彼女は自身でプログラミングをして、複数の計測を行うことができるハイテク相差計を開発した。従来、相差計は一部のハイレベルな研究者しか使わない難解なツールだったが、Wuchenichは誰もが使うことのできる機器に変貌させた。

Liquid Instrumentsは、3年をかけてプロトタイプから製品を完成させることに成功した。同社の12名の従業員には、Wuchenichの研究所の同僚や、CEOのDaniel Shaddockが含まれる。同社は、この製品を「Moku:Lab」と名付け、2017年に販売を開始した。Moku:Labは競合製品に比べて効率的なだけでなく価格も6500ドルで、比較的安価だ。

「昔は手紙を書くためにタイプライターを使い、計算するために計算機を使ったが、コンピュータは1台で2つの作業をこなせるようにした。我々は、計測業界で同じことを成し遂げようとしている」とShaddockは話す。

投資家もMoku:Labの可能性を高く評価しており、Liquid InstrumentsはこれまでにAnzu PartnersやANU Connect Ventures、Australian Capital Ventures Limitedなどから3370万ドル(約37億円)の評価額で1010万ドルを調達している。同社の2018年の売上高は約75万ドルで、顧客にはNASAやテキサス・インスツルメンツ、アップル、エヌビディアなどが含まれる。
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編集=上田裕資

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