三浦知良はなぜ「キング・カズ」と呼ばれるようになったのか

三浦和良(右)と松井大輔(Masashi Hara / Getty Images)


53歳になっても「サッカーが好きで仕方ない」
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ペレの代名詞だった「キング」を図らずも拝命し、メディアやファン・サポーターへも浸透しはじめてから実に四半世紀がすぎた。日本中を熱狂させた1993シーズン、Jリーグ元年のピッチに立ったプレーヤーで、現役を続ける唯一の存在となって久しい。

ペレが1977年に引退したときの年齢、37歳をはるかに超えているカズは、2020シーズンが開幕した直後の2月26日には53回目の誕生日を迎える。しかも、所属する横浜FCは今シーズンのJ2戦戦で2位に食い込み、13年ぶりとなるJ1への昇格を決めた。当時から横浜FCでプレーする唯一の存在となったカズもまた、13年ぶりにJ1の舞台に帰ってくる。

ピッチに立つたびに最年長出場記録を更新してきたカズは、横浜FCがJ1昇格を決めた11月23日の愛媛FCとの最終節で、後半42分からピッチに投入されて勝利を告げるホイッスルを聞いた。リーグ戦では約7ヵ月半ぶりの出場であり、時代が平成をへて令和に入ってから初めて魅せる勇姿に、ホームのニッパツ三ツ沢球技場を埋めたファン・サポーターのなかには涙する人もいた。
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「戦力になっていない」「とっとと引退しろ」「若手の出場機会を奪うな」果ては「客寄せパンダ」と、カズを非難する声は、特にインターネット上などで少なくない。それらをすべて受け止めたうえで、カズは前方に誰もいない道を走り続ける。現役を続ける唯一無二の理由としてあげる強い思いは、Jリーグの黎明期と、もっとさかのぼればブラジル時代と何ら変わらない。

「サッカーが大好きで仕方がない、ということに尽きると思う。子どものころからサッカーのことしか知らないし、サッカーには心から感謝している。だからこそ、サッカーに対して失礼のないように常に全力を尽くして、体と情熱が続く限りは続けていきたいし、やればやるほど、もっともっとサッカーをやりたいと思う。トレーニングや実戦で自分自身が思うようなプレーができないと、もっともっと上手くなりたいとも思う。その意味では、サッカーに対する情熱はどんどん深まっていく。僕のなかでは決して衰えることはないんじゃないかと思うんですよね」

今夏にジュビロ磐田から移籍し、クラブチームでは初めてカズとチームメイトになった41歳の司令塔・中村俊輔は、いっさいの妥協を許さない常日頃のカズの姿に「練習で疲れた、なんて言っていられないね」と目を輝かせながら、こんな言葉を紡いだことがある。

「53歳のカズダンス見たくないですか? 見たいでしょう? 誰よりも僕たちが見たいからね」

今シーズンの公式戦でカズと2度共演した38歳の元日本代表MF松井大輔も「PKを獲得して、カズさんに決めさせたかったですね」と得意のドリブルを仕掛け、相手のファウルを誘うタイミングを狙っていたと試合後に明かしたことがある。

腰をくねらせ、軽やかにステップを踏みながら左手を股間のあたりにあて、右手の人さし指を天井へ突きあげて吠える。ゴール後のパフォーマンスが最後に舞われたのは、2017年3月12日のザスパクサツ群馬戦までさかのぼる。

歓喜のダンスが時空を超えて、それもJ1の舞台で披露されれば──再び飛び交う「キング・カズ」という言葉とともに、サッカー界を飛び越えて日本中が元気になる。

連載:THE TRUTH
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文=藤江直人

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