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2020.01.02

メルカリがJリーグに参入した理由──「テクノロジーの時代だからこそ、人間っぽさが大切になる」

(左)アカツキCEOの塩田元規氏 (右)メルカリ取締役会長の小泉文明氏

「目に見えないものを大切にする力」

「“魂”を進化させるとあなたはもっと輝く」

東証一部上場企業のCEOが上梓する書籍のメッセージとしては異色とも言える、アカツキCEOの塩田元規氏初の書籍となる『ハートドリブン』。不確実性の高い時代だからこそ、自身の内側に目を向け、進化させていくべきではないか──。Forbes JAPANでは、この価値観にフォーカスし、塩田氏が「いま語り合いたい」と熱望した5名との連続対談をスタートさせている。

第4弾は、アカツキ創業期に社外取締役を務めた、メルカリ取締役会長の小泉文明氏だ。メルカリは2019年秋にJリーグ・鹿島アントラーズFCを買収し、小泉氏はその代表取締役社長に就任したことも記憶に新しい。アカツキもまた、2018年末に東京ヴェルディの株式を取得し、経営に参画した。くしくも同時期にクラブチーム運営に乗り出した2人だが、小泉氏は『ハートドリブン』をどう読んだのだろうか。

対談を進めていくなかで見えてきたのは、合理化を進める「テクノロジー」や、人間の本質に潜む「恐怖心」に対抗する術としての「ハートドリブン」の可能性だ。

テクノロジーが進化するほど「心の豊かさ」を求める

塩田元規氏(以下、敬称略):読んでいただきましたか。『ハートドリブン』。

小泉文明氏(以下、敬称略):読みましたよ。正直な話、アントラーズの社員に配るつもりで100冊買いましたから。

塩田:マジですか! 嬉しい!

小泉:特に第1章の「世界はもう心の時代に入っている」「世界に起こっている三つの変化」あたりのメッセージは、まさしく僕がいつも言ってることに近くて、めちゃめちゃ共感したんですよ。言葉にして伝えるのもなかなか難しいなぁ、と思っていたから、「言語化してくれてありがとう!」って思いました(笑)

塩田:特に共感した点は、どういうところですか?

小泉:塩田さんもそうだろうけど、テクノロジーの会社を経営していると、その光と影というか、人間としての揺り戻しが見えてくると思うんです。テクノロジーを使えば使うほど、人は「心の豊かさ」を別のベクトルから求めようとしていく。僕らがこのタイミングでアントラーズを買収したのは、まさに「ハートドリブン」だったんですよ。

塩田:メルカリと言えば、テクノロジーを極めていくというか、これまでなかった価値を創造して、利便性の高いマーケットを築いてきましたよね。

小泉:プラットフォームって無機質なイメージがあるかもしれないけど、メルカリを使ってくださっているユーザーは、実は利便性より「誰かが買ってくれる楽しさ」や「商品を通じたコミュニケーション」を求めている。だからある意味、人間っぽさがあるんです。で、思えば前職のミクシィもどこかウェットな感じがあるというか、マイミクとの関係性ってすごく温かみがあるじゃないですか。

塩田:特に初期のフェイスブックとは、まったく毛色が違いましたよね。

小泉:だから、一見ミクシィもメルカリもテクノロジーを追っているようなんだけど、ハートドリブンでやってきた部分があったからこそ、多くの方に受け入れてもらえるようなサービスになったと思うんです。

塩田:会社としてはテクノロジー畑の人がたくさん集まっているわけだから、普通に考えれば数字やデータに寄りがちですよね。メルカリもきっと、さまざまなKPIを設定して、それらを追っていますよね?

小泉:そうですね。

塩田:僕らもそうなんです。しっかりKPIはKPIとして追いかけている。ただ、その中でウェットな部分というか、余白をどこまで作れるか、ということなのかな、と。
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文=大矢幸世 写真=小田駿一

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