言うまでもなく、「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)は、2019年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールに輝いた作品だ。韓国映画としては初めての同賞受賞で、前年には、日本の「万引き家族」(是枝裕和監督)が同じく最高賞を受けているので、世界で最も有名な映画祭で、2年連続でアジアから受賞作品が出たことになる。(監督インタビューはこちら>>)
前年の受賞作に触発されたわけではないとは思うが(「万引き家族」受賞時には「パラサイト 半地下の家族」の撮影は始まっていた)、逼迫した生活から脱け出すため「悪事」に手を染める「家族」の物語が、奇しくも世界中から集まった審査員たちに続けて支持されたことは、とても興味深い。
「パラサイト 半地下の家族」は、本国の韓国では、カンヌでの受賞直後に公開されたが、タイトルは韓国語で「寄生虫」。英題も「Parasite」であるから、「半地下の家族」というのは、日本オリジナルと言うことになる。
明らかに「万引き家族」を意識した邦題だとは思われるが、この「半地下」というのが、作品を観るうちに大きな意味を持ってくるので、日本の配給会社がつけたにしては、珍しくなかなか秀逸なサブタイトルではある。
半地下の一家と高台の一家
物語は、その「半地下」から始まる。最初の映像は、地上より低い場所にある一家4人が住む部屋からのショットだ。半地下から窓を通した眺めは、つねに視線は下からのものになる。見上げた路上では、酔っ払いが小用を足していたり、窓を開ければ、散布された消毒剤が入り込んできたりする。
半地下であるがゆえに、電波も弱い。Wi-Fiは上階の家のものを盗用している。水圧も低いためか、トイレは家のいちばん高い場所に設置されている。
最初に描かれるこれらの映像で、この一家が置かれている苦境は、まず視覚的に認識される。しかもユーモラスに。導入部から、細部にまで行き届いたポン・ジュノ監督の「技」が冴え渡っている。