シネマ未来鏡




一家は、過去いくつかの事業に失敗してきた無職の父、そんな夫に強く当たる元ハンマー投げの選手だった逞しい母、何度も大学受験に失敗している浪人生の長男ギウ、絵画の才能を活かすために美術大学をめざしている長女ギジョンの4人だ。生活に困窮する一家は、とりあえずピザのパッケージを組み立てる内職で糊口をしのいでいる。

ある日、ギウのところに、名門大学に通う彼の友人から、外国留学する自分の代わりに、ある家の娘の家庭教師をしてくれないかという依頼がある。女子高生である娘に好意を持っている友人は、お前ならだいじょうぶだと自らの代役をギウに託す。

ギウが家庭教師をすることになったのは、街の高台のモダンな豪邸に住む一家の娘だ。父親はIT企業の社長で、家を訪れると、半地下とは天国と地獄、大きな窓から光が射す広々としたリビングに通され、そこには若くて美しい社長夫人が待っていた。

何度も大学入試に挑戦しているギウは、ある意味で「受験のプロ」でもあるため、すぐに夫人と娘の心を掴む。高台の一家には、もう1人まだ幼い息子がいて、彼が絵を描いているのを見て、ギウは、良い美術の家庭教師を知っていると夫人に申し出る。後日、高台の家に連れ立って現れたのは、ギウと妹のギジョクだった……。

こうして、半地下の一家は、高台の一家に「パラサイト」していくのだが、これ以後の展開については、まったくの先入観なしで観たほうが楽しめるので、物語の紹介はここまでにしておく。とにかくこの先に二転三転、驚くべき展開が待っている。

「私は、全ての映画監督が望むように、観客にはハラハラしながら物語の展開を体験してほしいのです。大小に関わらず、全ての瞬間において熱く興奮しながら、映画に驚き、映画に引き込まれてほしいのです」

ポン・ジュノ監督からも、このようなネタバレ回避のお願いが出されているが、まさにこの言葉に偽りはなく、「パラサイト 半地下の家族」には、まったく先の読めない、緊張感溢れるサスペンスと驚愕のサプライズが、ぎっしりと詰まっている。

ちょっとブラックな味わいを持ったコメディともいえるが、笑いながら、びっくりしながら、そして考えさせられながら進んでいくポン・ジュノ監督のストーリーテリングは、確かなアングルに裏打ちされた素晴らしい映像も含め、実に見事でパーフェクトだ。

朴政権のブラックリストに


ポン・ジュノ監督。カンヌ国際映画祭にて

ポン・ジュノ監督は、1969年の生まれ。韓国の大邱市の出身で、延世大学社会学科を卒業後、韓国映画アカデミーで映画制作を学ぶ。これまでも「殺人の追憶」(2003年)、「グムエル-漢江の怪物-」(2006年)、「母なる証明」(2009年)など、作品を発表するごとに多くの観客動員と高い評価を得てきた。

2013年には海外にも進出、ハリウッドスターも配した「スノーピアサー」では、近未来の氷河期に入った地球を舞台に、走り続ける列車のなかで繰り広げられる苛烈な「階級闘争」を描き、今回の「パラサイト 半地下の家族」にも通ずる、メッセージ性の強いテーマを取り上げている。

ネットフリックスのオリジナル映画として手がけた「オクジャ/okja」(2017年)でも、世界の食物を支配しようとする多国籍企業と韓国の山村で育った巨大な動物オクジャを対峙させ、風刺の効いた不思議な物語世界をつくり出している。ちなみに、この作品では、ブラッド・ピットの所有する映画制作会社プランBとタッグを組んでいる。

文=稲垣伸寿

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