表現力をよくするレシピ

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仕事ができる人は演技力がある。私たちは知らず知らずのうちに日常生活のなかで「演技」している。そのことを自覚していて、それを「力」として活かしている人が、仕事ができる人なのだ。

演技の基本は「真似る」ことだ。「真似る」は「学ぶ」の語源と言われている。その語源の通り、私たちは何かを真似ることで、そのものの本質を理解しようとしてきた。

演技で真似ることには馴染みがあるはずだ。小さい頃、より強くなりたかったり、格好良くなりたかったりして、テレビやコミックのヒーローやヒロインの真似をする「ごっこ遊び」をしたことがあるにちがいない。

遊びではあったが、弱いものを助けるという意識や、不正はしないという正義感は、その後、大人になっても行動の規範になっているのではないだろうか。仕事の難局面でも、そのことを思い出すことで、正々堂々とやり遂げる勇気になっているのではないだろうか。

そもそも、ヒーローやヒロインが大活躍するきっかけは、自分の使命を強く感じたときだ。私たちも、仕事において、自分の真のミッションを感じると力が湧いてくるはずだ。

「振り」をすることの意外な効果

私たちは、日常生活のある局面で、「振り」をして、うまい逃げ方をしているときがある。「振り」も演技の一種だ。

例えば、面倒な問題を持ち掛けられたときに、忙しい振りをしたり、本音を悟られないように無表情なポーカーフェイスをしたりする。「逃げ方」というと消極的に聞こえるが、トラブルに巻き込まれないリスク回避の手段でもある。

仕事でも、場の雰囲気を壊さないように席をはずしたり、誘いをすんなり断るときなどに「振り」は意外に効果がある。

そんな、「振り」をするときに、参考になるのが人物のキャラクターだ。例えば、初対面の人との交渉で、相手に丸め込まれないようにするのには、気難しい人のキャラクターの振りをすれば、かなり抑止にはなる。

そう思えば、私たちの周りのすべての人はキャラクターの参考になるだろう。あなたにとって気難しい上司がいたら、対外的には、まさにそれを演じれば良いのだ。

自分の役割を意識する

最後に仕事で自分の立ち位置をつくりやすくする「役割」について説明をする。これも演技には重要だ。

研修などで役割を演じるロールプレイはお馴染みだと思う。それは単なるリハーサルではない。自分の役割を考えることなのだ。

私たちは、他者との関係のなかで、無意識のうちに社会的役割を常に演じている。学校や家族のなかでも「叱る役」や「なだめる役」という役割が、なんとなくあったりするはずだ。

こうした関係性を意識すれば、相手の反応にあわせて、自分の役割を瞬時に見つけることができる。仕事でも、状況のなかで適切な役割にハマっていれば、言動がミスリーディングされることはなくなる。

たとえば、会議で、プレゼンをして進行するのが主役ならば、資料を配る脇役や、笑顔でいたり深くうなづいたりする引き立て役も重要なのだ。こうして、状況に合わせて自分の役割を意識することができれば、存在感は自然に出てくるはずだ。

室町時代の猿楽師である世阿弥は「花伝書」のなかで、演技を「そのものの心を感じ、態度がそのようになっていること」だと定義した。これができる人こそ、仕事においても人的スキルが高いのだ。

文=中井信之

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