【独占】市川海老蔵がテクノロジーに見出した可能性、なぜ伝統文化との融合を?


また、澤邊も伝統文化と最先端のテクノロジーの掛け合わせについて、こう語る。

「少しずつ変化は続けていますが、基本的に歌舞伎は完成された1つのフォーマットがあり、奥行きのある平面的表現の世界。テクノロジーは基本的に異質な存在なので、どうしてもうるさくなってしまう。

ですから、昨年の源氏物語で、伝統文化の世界にずっと身を置いてこられた海老蔵さんと一緒に仕事ができて、強烈な学びがありました。テクノロジードリブンで考えられたプロジェクションマッピングやLEDライトによる演出は、ギラッとした人工的な印象を感じさせると思います。

実際、それがメディアアートとして発展してきたわけですが、職人によって継承されてきた美術の中で視覚的に排除されないためには絵として溶け込むほどの“いい塩梅”を探さなければいけない。光の強さや背景との最適なバランスはデジタルの強みをあえて封じ込めることによって生まれる。この取り組みを通じて、テクノロジーを使う際の新たな視点がもらえました。」

トップダウンで物事を進めていく期間が必要

2013年のクラウドファンディング黎明期からマクアケを活用し、その後の出資につなげたほか、最近では歌舞伎をユーチューブで全世界に生配信するなど、市川海老蔵は先見の明を持って、“数年後の当たり前”を捉えているように思える。実際、出資したマクアケは今年の12月に上場を果たすなど、今やクラウドファンディングは当たり前のものとなっている。

そんな市川海老蔵が見据える、2020年以降の日本とはどういったものなのか──取材の最後、市川海老蔵に質問を投げてみた。

「日本の未来については、きっとほどんどの人が同じ考えを持っているでしょう。このままいけば、明るくない未来がやってきます。先日、日本の出生数が年間90万人割れすることが確実になるなど、人口減少に拍車がかかっている。これは日本の政府が考えているよりも2〜3年起きてしまってことで、今後1億2000万人の人口が9000万、8000万と減っていったら、世界が日本をマーケットとして認めなくなるわけじゃないですか。

僕はもっと抜本的な改革が必要だと思っています。例えば、日本は民主主義の国ですが、今後のことを考えたときに“独裁”とまでは言わないですが、明快なビジョンを持った人がトップダウンで物事を進めていく期間が一定は必要な気がしています」

文=新國翔大 写真=小田駿一

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