ビジネス

2019.12.26

メルカリが東大と連携。いま「価値交換工学」の研究に取り組むワケ

(左)メルカリ取締役CINO・濱田優貴(右)RIISE初代機構長・川原圭博


メルカリと組むことで、1400万人のユーザーに試してもらえる

──本プロジェクトの最終的な「着地点」は頭の中にあるのでしょうか?

川原:「こうやったら、こういう成果が出るだろうな」というイメージはもちろんあります。一方で、まったく想像もしないようなアウトプットが出てきた方がよっぽど面白いと考えています。

濱田:将来的な構想として、わかりやすいところで言えば、例えば、家や車の売買がワンクリックで登記完了となるような仕組みを我々の共同研究によって構築することができたとしたら、それは非常に面白いなと個人的には思います。もちろん、様々な法的な課題をクリアする必要があることは言うまでもありませんが、ただ、20〜30年後の未来において、現在のようなペーパーワークに我々が取り組んでいるかと問われれば、それは決して「イエス」ではないだろうなと個人的には考えています。

──研究経費として、5年間で10億円を予定しているとのことですが、これは相当の「本気度」の現れということでしょうか?

濱田:そうですね。東京大学の社会連携研究部門の中でこの金額は、民間企業の中では、トップの拠出額だと思います。もちろん、会社としての最終的な目的は「事業化」することであり、より具体的には、「メルカリのサービスをより良くすること」もしくは「新しい事業を創ること」が私に課せられたコミットメントです。その点については、CINO(チーフ・イノベーション・オフィサー)として、相当コミットする覚悟があります。

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川原:大学として、税金に依存しないで、民間企業と組む場合、それは必ずしもポジティブなニュアンスを伴わないことがあります。それは、おそらくは、「企業の出先の研究機関になってしまうのではないか」という懸念があってのことなのでしょうが、今回の取り組みに関して言えば、大学のエコシステムをよく理解していただいていることもあって、「そうはならない」という自信があります。

逆に、「良いとこ取り」をした非常に良いテーマ設定ができたと考えています。加えて、「価値交換」というのは、まだどう捉えて良いかわからない未知の分野ということもあって、学問的にも凄く魅力があるし、メルカリさんのような事業会社と組むことによって、自分たちで開発した技術・サービスがそのまま約1400万人のメルカリユーザーの方々に使って頂くことができる。大学発の技術がいきなり1400万人の方々に使って頂くことはまずないと言って良いでしょうから、それは非常に魅力的であると考えています。

文=勝木健太 写真=柴崎 まどか

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