実は、私が呼吸に興味を持ったのは、10数年前に能楽を鑑賞したときでした。いままで聞いたことのないような声の出し方や、そのゆったりとした動きに衝撃を受け、強く惹かれていったのです。
能の所作は、まるで時の流れがゆったりとしているようで、自然とこちら側の気持ちも落ち着き、呼吸が深くなります。その非日常的な体験に魅了され、いまでも日本橋の水戯庵などに定期的に通っています。
能による感覚の変化を活用していたと言われているのが織田信長で、信長は桶狭間の戦いなど、恐怖心や緊張感が高まるときは、能の「敦盛」を舞い、心を落ち着かせたといわれています。
私が実践している2つの方法
呼吸で自律神経に働きかけ、情動をコントロールする。そんな技術を身につけられれば、情報の波に襲われ慌ただしい日々を送る私たちでも、平常心で安定したパフォーマンスを発揮できるのではないかと考えています。
とはいえ、誰もが信長のように「敦盛」を舞えるわけではありません。そこで、呼吸スキルを高めるために私が実践している方法を、2つご紹介します。
1つ目は、歩くスピードを落とすことです。私は普段歩いているときでも、Apple Watchが「エクササイズ」と認識するくらい、早歩きをしています。時間に余裕のあるときは、このスピードを2分の1くらいに落とします。さらに、肩甲骨も大きく動かすなど、呼吸筋体操も加えることで、呼吸が深くなりリラックス効果が得られます。
2つ目は、話すスピードを落とすことです。イメージはプレゼンをされているときの柳井正さんや孫正義さんのペースです。ゆっくり話すと最初はまどろっこしく感じますが、慣れると喉や頭の緊張感が弱まり、とても快適に話すことができます。普段早口だと言われる人は体感しやすいのではないでしょうか。
この2つを意識することで、想像以上に心身が楽になる感じを味わえるはずです。ほんのわずかなことですが、セルフコンディショニングにはうってつけなので、ぜひ一度試してみてください。
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