ブランド米に気候変動の影響、イメージから遠ざかる品質

福島県で栽培した京都府オリジナル品種の「祝」



最高品質地域でつくられた山田錦の玄米

山田錦は、東北から九州まで広く栽培されているが、特に兵庫県の旧吉川町(三木市)、旧東条町(加東市)、旧杜町東部(加東市)のものが最高とされてきた。また、山田錦は酒米としての評価が高く、2001年から酒造好適米の作付面積で第1位を誇り続けている。

その最高品質地域でつくられた山田錦を生産者からもらったことがある。大粒だったが、玄米はひと目でヤケ米になっていることがわかった。米粒を割ってみると、見事な線状の心白(「しんぱく」と言い、米の中心部にある白く不透明な部分をさし、良質の麹をつくる)が入っていたが、精米して炊いてみるとビニールのような香りがあり、食べるとえぐみがあった。

「酒米だから食べてもおいしくない」と言われるかもしれないが、酒米でもおいしいものはおいしい。心白によって食感が粉っぽくても、味は良い酒米もある。

酒米だけでなく、うるち米で、誰もが知る「コシヒカリ」でも同じような変化が現れている。

コシヒカリと言えば、新潟県魚沼地域のもののブランド力が高いが、2019年度産のコシヒカリは白未熟米が多く、一等米比率が大幅に下がった。コシヒカリは、青森県から沖縄県まで広く栽培することができるが、高い品質を保つことができる地域は限られている。

もちろん、生産者によって品質は違い、多くの生産者が高温障害を受けた地域でも、最高品質の米をつくり出すプロもいる。しかし、傾向としては、かつてコシヒカリが最高品質と言われた地域でも、明らかに良質なものをつくりにくくなっている。

コシヒカリは、酒米とは違い、食べる米であるだけに品質低下が如実だ。だからこそ“コシヒカリを越える米”をうたうなど、ポストコシヒカリを目指す品種が登場している。


新潟県でもコシヒカリが高温障害の影響を受けやすくなっている
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文=柏木智帆

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