ビジネス

2019.12.25 19:00

下落率ワーストはメイシーズやギャップ 19年の米小売り銘柄

damann / Shutterstock.com

かつては米国を代表する由緒ある小売商として知られたメイシーズも、今では疲弊した百貨店の一つに零落している。競合他社との差別化に苦慮し、無秩序に広がったモールベースの店舗への集客も苦戦が続いている。

投資家は今年、メイシーズの株式をこぞって手放し、同社株の年初からの騰落率はマイナス46%と、S&P500指数を構成する小売り銘柄で最悪となっている。足元の時価総額は約50億ドル(約5500億円)で、2015年に付けたピークの240億ドルの5分の1程度。同社の届け出によると、保有する不動産の価値は190億ドルとされ、残念ながらこちらの方が会社自体の価値よりもはるかに高い状態になっている。

メイシーズは11月の決算で、既存店売上高が2年ぶりに減少し、通期見通しを下方修正した。最高経営責任者(CEO)のジェフ・ジェネットは「売り上げの減速が想定していたよりもきつかった」と述べ、中低級のモールに入る店舗の売り上げが振るわなかったことが一因だと説明している。

S&P500指数の小売り銘柄で年初からの騰落率が2番目に悪いのは、衣料品チェーン大手のギャップ(マイナス31%)。11月にはアート・ペックCEOが突然退任し、創業者の息子が暫定CEOに就いた。ギャップは業績が比較的好調な「オールド・ネイビー」を分社化し、残りの「GAP」や「バナナ・リパブリック」などでもう1社をつくる再編計画を進めているが、最近はオールド・ネイビーの売り上げにも陰りが見られ、投資家の懸念材料になっている。

また、女性用下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」などを展開するエル・ブランズの株価も低迷し、年初から28%下落している。ヴィクトリアズ・シークレットは、新興下着通販サイトのサードラヴ(ThirdLove)やトゥルー・アンド・コー(True & Co)にシェアを奪われた。エル・ブランズのCEOレスリー・ウェクスナーと、未成年者の性的人身売買に関わったとして起訴された資産家のジェフリー・エプスタインの関係も問題視された。

全体として見ると、今年はS&P500指数の小売り銘柄の半分強が、米株式市場全体の騰落率(プラス28%)を下回っている。ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムもそれに含まれ、翌日配送のための巨額投資などが投資家に嫌気されて19%の上昇にとどまっている。とはいえ、創業者のCEOジェフ・ベゾスはなお世界一の資産家である。

小売業界はアマゾンの支配が続いているものの、今年は投資家にとって明るい材料も多くあった。例えば、ディスカウントチェーンのターゲットの株価は95%、家電量販チェーンのベスト・バイは66%それぞれ上げている。ベスト・バイは今年、新CEOにコリー・バリーが就任したが、市場はそれをおおむね好感しているようだ。このほか、低価格衣料品チェーンのロス・ストアーズ(Ross Stores)とTJXも好調で、年初から38%と34%の上昇を記録している(編注、記事中の騰落率はいずれも2019年12月19日現在)。

編集=江戸伸禎

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