中央銀行は社会格差や気候変動の解決に貢献すべき

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さらにホノハンは、金融緩和の推進が格差を拡大してきたという、金融市場でしばしば主張される意見を、巧みな理論で一蹴した。

「長期債の市場価格の急激かつ継続的な上昇について、平等を重視する人たちの間では不満の声があがっている。低所得世帯がこうした債券をあまり保有していない点を、彼らは懸念している」と、ホノハンは書いている。

しかし、(2007年から2009年にかけての)世界金融危機の期間に中央銀行が実施していたような量的緩和策に起因する債券価格の上昇は、金融緩和が引き起こす、最も直接的な最初の結果にすぎない、とホノハンは指摘する。

「量的緩和策は、金融システムのあらゆるイールド(利回り変化)に影響を与える。加えて、総需要や経済活動を増大させるような行動反応を喚起する」とホノハンは続けた。

「従って、資産価格に対する直接的な影響は一般的に、貧富の格差を広げると理解されていることは確かだが、一方でこうした量的緩和策は、雇用水準の回復を加速するために必要とされる場合があり得る。雇用水準が回復すれば、垂直的不平等(および人的資本の分布における格差)を縮小する効果がある」とホノハンは主張した。

一方、中央銀行に対するもう1つの批判に対しては、ホノハンはより理解ある態度を示している。こちらの批判は、中央銀行の政策が、カーボンフットプリントの大きな企業の売上を押し上げ、環境に悪い影響を与えているというものだ。この傾向は、中央銀行が、国債だけでなく社債を買い入れている欧州や英国で特に顕著だという。

「金融政策の一環として私的証券を購入した中央銀行は、この領域における時流から立ち遅れている。さらに、市場に対して中立な態度を保とうとする結果として、気候変動の問題に対応するためには官民をあげた行動が必要だという、高まりつつある民意に反対の立場を取っているように見えるリスクもある」と、ホノハンは述べた。

中央銀行の幹部たちも、近年は気候変動の問題に対する関心を高めている。

米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード(Lael Brainard)理事は11月、「金融政策と金融の安定にとって、気候変動が重要な意味を持つ理由」と題した講演を行った。その中でブレイナード理事は、「我が国の金融システムは、サイバー攻撃をはじめとする他の重要なリスク要因と同様に、気候変動の影響にも耐えうるものであることが望まれる」と発言した。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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