英ガトウィック空港、知られざる第2の滑走路の活用目指す

ガトウィック空港 / Getty Images

ロンドン周辺の空港での追加滑走路建設をめぐる議論は昨年、最初の公式な障壁を通過した。ヒースロー空港とガトウィック空港は、滑走路建設の承認をめぐって熾烈な争いを繰り広げていた。ヒースローにとっては3本目、ガトウィックにとっては2本目の滑走路となる。

ヒースローは長きにわたり、英国の主たる空港とみなされてきた。乗客数で見れば、これは紛れもない事実だ。そのため焦点となったのは、ヒースロー空港の拡大によって引き起こされる汚染や騒音が地元の環境やコミュニティーにもたらす影響だ。ヒースローに追加で滑走路を建設するとなると、多くの住民が退去を余儀なくされる。ガトウィック空港に2本目の滑走路を建設するコストは経済的にも環境面でも比較的小さいと考えられていた。

長年にわたる政治的議論の末、ヒースローはついに3本目の滑走路を建設する承認を得たが、いまだに多くの障壁や法的問題が残っており、拡張工事の開始は早くとも2026年となる見通しだ。

しかし、滑走路増設をめぐる争いでヒースロー空港が勝利したからといって、ガトウィックが2本目の滑走路を持つ目標を諦めたわけではない。ロンドンのすぐ南に位置するガトウィックは、利用者数が英国2位、滑走路が1本しかない空港としては世界1位だが、実はヒースローとの争いの最中にはほとんど注目されなかった知られざる事実がある。

ガトウィックには既に、2本目の滑走路が存在するのだ。

この滑走路は緊急時に使われる予備滑走路だが、ガトウィック空港は両滑走路から同時に離着陸を行う許可の申請を目指している。

同空港はこの予備の滑走路について、これまであまり声高に主張してこなかった。同空港に2本ある滑走路の中央線は198メートル離れており、国際民間航空機関(ICAO)の規定では、複数の滑走路で同時に離着陸を行うには中央線が最低でも210メートル離れている必要があるとされている。片方の滑走路の幅を少し広げ、中央線を12メートルずらして中型機やワイドボディー機が同時に両滑走路を使えるようにすれば、この問題は解決できる。

両方の滑走路を完全に商業利用することを妨げてきた合意は今年、期限切れを迎えた。ガトウィック空港が今まで2本目の滑走路活用の可能性についてあまり言及してこなかったのは、この合意が主な理由だ。

予備滑走路の活用計画はまだ初期段階にあるものの、皮肉なことにガトウィック空港ではヒースロー空港の第3滑走路が完成に大きく先立ち追加滑走路の使用を開始できる可能性がある。ただ、どちらの空港も大きな法的障壁や、地元住民や環境保護団体からの反対に直面している。

ただ一つ確実に言えるのは、英国での空港拡張には段取りが必要であり、どちらの空港も滑走路の建設開始までには少なくとも2、3年かかるということだ。

編集=遠藤宗生

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