ビジネス

2020.01.04

イノベーター数日本一!ソニーの完全復活を支える「新イノベーション戦略」

勝本徹 ソニー 執行役専務 


さらに、次世代通信規格の5G分野、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)をはじめとするxR分野でも、複数部門との協働が始まっているという。

「R&Dセンターでは、センター内の横連携、海外拠点とのコミュニケーション活性化、外国人や女性エンジニアの採用強化など、イノベーションにとって重要な『考え方の多様性(ダイバーシティ)』を生む組織づくりを積極的に行っています」
 
今回のイノベーション集積度ランキングにおいて、ソニーは2位にランクインしている。高評価となった最大の要因は、特許スコアの高いイノベーターが突出して多かったことだ。同社には、社会的インパクトが大きい発明・開発を行っているイノベーターが、400名以上在籍する。その数は、国内上場企業の中で群を抜いている。
 
R&Dセンターが進める組織変革により数多くの社内のイノベーターたちが結びつけば、さらなる高度な技術や事業の創出が期待できる。

技術を通じて世界に「感動」を

ソニーのR&D戦略は現在、従来のハードウェア・デバイス技術、新機能材料・解析技術映像技術に加え、センシング・インタラクション技術、AI・ロボティクス技術など、7つの技術を注力領域にあげている。
 
吉田社長は、19年1月に米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市・CESにて、ソニーは「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」であるとし、「テクノロジーを通じて最高のエンタテインメント体験をお届けすることで、世界を感動で満たしていく」と宣言した。R&D戦略も、「『感動を生む、テクノロジー』の開発」を謳う。

「ソニーの持つ多様なビジネスポートフォリオと、R&Dセンターの多様なテクノロジーが会社全体として有機的につながることで、新しいビジネスクリエーションのアイデアが生まれる未来を期待できます」(勝本)
 
19年に起きた、米投資ファンドのサード・ポイントによる半導体事業の分離・上場の要求に対し、ソニーは「イメージング&センシング技術は、ソニーのテクノロジーの象徴」と声明。「長期的な企業価値向上の観点からも最も重要な技術」と発信した一幕も、企業としての技術への姿勢が表れている。
 
技術の力で人々の生活を豊かにしたい──。創業者・井深大、盛田昭夫の2人の意志を次代につなぐ、未来に向けた探索は、始まったばかりだ。


かつもと・とおる◎1957年生まれ。ソニー執行役 専務R&D担当。1982年、ソニー入社。現在、メディカル事業担当、R&Dセンター長、コーポレートテクノロジー戦略部門長。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ代表取締役副社長も務める。

日本で最もイノベーティブな企業を選出した「GREAT COMPANY 2020」。ランキングは特設ページで公開中。

文=山本 智之 写真=宇佐美 雅浩

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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