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東京ガスは19年12月、「ヒナタオエナジー」と「スミレナ」という二つの新事業会社を設立した。既存事業とのしがらみがあってやりにくい新ビジネスも、本体と切り離せば比較的自由に、意思決定を早めてやりやすくなる。

新会社2社の社長に抜擢したのは、どちらも30代の若手社員。「すべてがうまくいくとは思っていないが、挑戦することが大事。やりたい社員にはどんどんやらせます」と、意欲的な社員の背中を押す方針だ。

実は内田には苦い経験がある。人事畑で10年。会社は成果主義を採用していたが、自分がやりたくない仕事で成果を問われても社員は納得できないと考えて、複線型の人事制度を導入した。

育てた人材が他部門に流出することを恐れたマネジャーらから、強い反対があった。それでも「出発点を個人にしないと、会社の業績向上につながらない」と強行した。しかし、仕組みができて最初こそ機能したものの、運用していくと次第に形骸化して戻っていった。

「変えるときは、形だけ整えてもダメ。やった人間が最低でも5〜6年はいて、定着するまで汗をかかなきゃいけません。

今回発表した経営ビジョンも同じ。次の中計で具体的なプランに落とし込みますが、どの部門でどのようなKPIを設定して、誰が責任を持ってPDCAを回していくのか。それを決めないと何も動かない。私自身、絵を描いたからお役御免というつもりもない。しっかりコミットしていきます」

内田の理想のリーダーは、幕末に勘定奉行として日露和親条約の交渉役を務めた川路聖謨。正直、幕末に活躍した他の偉人たちと比べて、地味な印象が否めない。しかし、「老中が右往左往して何も決められないなかで、彼が決めては交渉をまとめた。誰も正解がわからないなかで、正解を決めるのがリーダーの役割」と高く評価する。

エネルギー業界は、幕末に勝るとも劣らない激動の時代を迎えている。脱炭素化を求める社会の圧力は、まるで列強による開国要求並みの強さで迫ってくる。

自身のリーダーとしての在り方を、激変の時代を生きた川路聖謨に重ねるところはあるのか。そのように水を向けたら、「それは牽強付会にすぎる」と照れ笑い。未来を語るときの表情は終始厳しかったが、このときばかりは頬が緩んでいた。


東京ガス◎国内最大規模のガス会社。都市ガスの国内販売量シェアは約40%で、首都圏を中心とする1100万件に供給。小売電力も218万件に供給している。2019年11月には、「CO2ネット・ゼロ」を目標に掲げる長期経営ビジョンを発表した。

うちだ・たかし
◎1956年生まれ。東京大学経済学部卒。79年、東京ガス入社。導管企画部長や総合企画部長、人事部、秘書部、コンプライアンス部、監査部の担当役員などを経て2016年、代表取締役副社長執行役員に就任。18年4月より現職。

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文=村上 敬 写真=宇佐美 雅浩

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