ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信



ワシントンDCの小児国立病院にて(Alex Wong/Getty Images)

各ニュース局が提供している動画を見るとよくわかるが、メラニア夫人は誰かを批判したわけでも、子供たちに叱りを与えたわけでもなく、終始ポジティブで前向きなトーンで子供たちに話しかけていた。そこで起こったブーイングなので、皆びっくりしたわけだ。

動画は、決して子供たちの顔を写していないし、集音マイクもなかったので、いったいどのくらいの数の子供がブーイングをしたのかはわからないが、複数、それも相当数の子供が関わったようだ。

たった5分程度のスピーチだったが、メラニア夫人は終始笑顔でブーイングを受け続け、退場する時にも罵声を浴びた。ブーイングに驚いたメディアからの質問にも、「この国には言論の自由があるわ」と言って大ごとにせず、笑みを保ったと伝えられる。

ワシントン・ポストは、このイベントが、昨今トランプ政権に対してアンチ・トランプ色が強いボルチモア市で行われたことを指摘して、仕方がなかったとあきらめ気味に報道しているが、一方でフォックス・ニュースは前代未聞の無作法だとし、これも民主党やそのリーダーたちが、トランプとさえ名前がついていればどんなことをしてもいいと煽っている証拠だと激しい論調だ。

ラスベガス・リビュージャーナル新聞のデブラ・サウンダーズ解説委員も、多すぎる大統領候補者を抱えて迷走する民主党の苦悩が現れているとし、政治の醜い部分が家庭に持ち込まれていることについて懸念を示している。委員は、もしこれがミシェル・オバマ大統領夫人だったら、このブーイングは直ちにヘイトスピーチとメディアに書きたてられ、大騒ぎを呼び込み、共和党攻撃に利用されたに違いないと指摘している。

このようにメディアの対応も含め、共和党と民主党の間にできた亀裂がかつてないほど大きいことを示されたと言ってもいい。

大統領夫妻に請求書が回る

ファースト・レディーと言えば、豪華なドレスや宝飾品で税金を無駄遣いしているという指摘があるが、これは誤解だ。ブッシュ大統領のローラ夫人の自著によれば、厳密に国務に関わるために使った経費以外は、本人たちの負担だという。

例えば、国賓を迎えた壮大な晩餐会でも、決してどんぶり勘定ではなく、大統領が友人や親族を招いた場合は、そのぶんの食事代はやはり大統領夫妻に請求書が回ってくるし、ドレスも基本的に自費だという。

同じドレスを二度着ようものならゴシップ誌やウォッチャーなどが、皮肉を込めて報道されるので、負担も馬鹿にならなかったという。

トランプ大統領が史上3人目の弾劾訴追を受けることがほぼ決まり、アメリカはいま政治一色だ。訴追を指揮しているナンシー・ペロシ下院議長や大統領に向けて、ますます個人攻撃の応酬が激化しているが、いわば非武装地帯だったファースト・レディーにまで未成年から罵詈雑言を浴びせられるのは、この国にとって褒められたことではない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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