失墜する大手テック企業人気 希望就職先ランキングで急落

アマゾン・ドット・コムCEO ジェフ・ベゾス / Getty Images

従業員が自分の勤務する企業の給与情報などを匿名で投稿できるウェブサイト「グラスドア」は、2007年の立ち上げ以降、非常に有用な情報源として就職活動中の多くの人たちに参考にされてきた。優秀な人材を採用・維持したい企業にとって、同サイトが毎年発表する企業ランキングで自社がどの位置に入るかはとても重要だ。

グラスドアが発表した「2020年最高の職場」ランキングでは、(順位付けの方法をめぐり批判はあるものの)主要テクノロジー企業の多くが魅力を失っている傾向が明らかになっている。昨年から順位を上げたマイクロソフトを除き、テック企業ではアップルが13位後退、グーグルはトップ10から外れ、フェイスブックは16位下落。アマゾン・ドット・コムに至っては、トップ100にすら入っていない。

つまり今年のランキングでは、メディアが伝えてきた事実が裏付けられた。その事実とは、グーグルはもはや、誰もが働きたいと思う神話的企業ではなくなっているということ。同社は着実に「普通の会社」となる道を辿っている。同社は、従業員の表現の自由を尊重しているかいなかや、従業員を不当に解雇したり、労働組合活動を阻害したりしたとの疑惑をめぐり、米労働局の調査を受けている。

フェイスブック社内の士気は低がり続けており、ユーザーからの信頼も低下する中で、同社は従業員向けのチャットボットを通じ、フェイスブックの活動に関する難しい問い合わせに対する回答をサポートしている。

テック業界にいったい何が起きているのだろうか? 筆者のように長年、ビジネススクールで教鞭をとってきた人は、学生のほとんどが特定のコンサルティング会社や金融会社で働きたいと思っていた時代を覚えているだろう。そうした企業は今、従業員をアルゴリズムで置き換えるようになっている。

2008年のリーマン・ショックと経済危機の後、今度はテック企業が人気の就職先となった。私が当時教えていた授業で、あるテック企業の幹部を招いた時の学生の関心の高さはよく覚えている。それが今、学生の多くはテック企業に対して非常に批判的だ。興味深いことに、若い学生ほど強い懸念を抱いている。

大手テック企業をめぐっては現在、その力を規制する方法についての議論が高まっている。米民主党から大統領選に出馬しているエリザベス・ウォーレンは、テック企業の規制を公約に掲げており、テック業界も今ではウォーレンを支持するようになっている。

グラスドアのランキングからは、今後どの分野の企業がテック企業に取って代わるのかが読みにくい。ズームから首位の座を奪ったハブスポットのようなソフトウエア会社から、コンサルティング会社、航空会社、ハンバーガーチェーンまで、さまざまな企業が入り混じっており、明確なパターンが見えない。

今は、次にどの波が来るかを見極めるヒントが少ない過渡期にある。しかし大手テック企業の衰退は、憂慮すべき状況だ。かつては慣習にとらわれず魅力的な職場環境を提供していたテック企業も、今では単に生計を立てるための場所に変わりつつある。

グーグルやフェイスブックに就職した人が周囲からうらやましがられる時代が終わりを告げ、創業者さえもが会社運営から手を引くような状況にあるのであれば、何かが変わったということ。何かが誤った方向へ進んでしまったということだ。

編集=遠藤宗生

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