星野源、サンディーが語る細野晴臣の魅力 50年の音楽人生から見えるその功績


楽器もオールマイティ

細野さんの技術については、こう語ります。

「彼がふとした時に踊る即興のダンスを見ると、黒人のリズム感を持っている。歌も上手だし、ベースギターだけでなく楽器は何でも得意。彼の指は柔らかく、力で弾いていないのに、そこが特等席のように音のツボに入る。名指圧師みたいです。そういう演奏は、習ってもできないもの。バンドのみんなも引っ張られて、本当のグルーヴが生まれます。

ドラムも、音が重くなく、ほっこりしている。聞いていると自然に踊りたくなり、腰が動いてくるんです。音楽とはお祝い事、というスピリットを持っているからでしょう。曲を作る時、細野さんは一人で様々な楽器の音を重ねていく。全体を聞くと、完成度がすごくて、スピリチュアルな世界ができあがっているんです」

「坂本教授のほうが知名度はあるけれど…」

さらに、改めて細野さんの功績を解説してもらいました。

「彼はテクノポップの創始者であり、無機質な機材を使って、人の感情を表現してきました。海外の一流アーティストにも一目おかれていて、坂本教授のほうが知名度はあるけれど、音楽マニアにとって、『キング・オブ・ダンディーファンク』は細野さんです。

常にわくわく、ドキドキ、気になって仕方ない音楽の世界を追及する永遠の音楽少年であり、優れた知性を持つ博士です。人間国宝と言ってもいいぐらい」(サンディーさん)

親子ほど年が離れた星野源との関係 

そんな細野さんの音楽人生を追ったドキュメンタリー映画「NO SMOKING(ノースモーキング)」が、11月から全国で公開中です。ナレーションは、細野さんの音楽に影響を受けているという星野源さんが務め、細野さんに「あとは、よろしく」と託された絆も描かれます。

星野源さんと細野さんは、対談集を出したり、ラジオ番組で共演したり、もともと親交がありました。親子ほど年の離れた二人に共通するのは、「音楽が好き」という気持ち。才能を認め合う、対等な関係が素敵です。

星野源さんは、ノースモーキングに寄せたコメントで「映画を観ると、普段何気なく僕たちが聞いている音楽のルーツが、細野さんにあることを知ることもできます」とリスペクトしつつ、こんなふうに表現しています。

「細野さんは定食で言うと、『特製ランチ』みたいな人です。豪華で楽しむところが多すぎて、どこから手を付けていいか悩んじゃう。生み出してきた音楽の多様性があると同時に、職人としての一本気な部分が共存している方だと思います」

連載:元新聞記者のダイバーシティ・レポート
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文=なかのかおり

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