ライフスタイル

2020.01.02 20:00

引退後のうつ病、どう対処するべきか

Inna Luzan / Shutterstock.com


だからといって、抗うつ剤を処方することは、どんな場合でも間違いだという意味ではない。命を救うために抗うつ剤が欠かせない患者がいるのはたしかだ。研究者は、うつ病の40%は遺伝性のものだと推定している。すなわち、生化学的な問題や神経系の問題があって、うつ病になりやすい人がいるということだ。そうした患者にとっては、薬を服用するのが合理的であるように思われる。
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とはいえ、うつ病は複雑な病気であり、環境的な要因とも関連している。具体的には、十分に眠れていないことや栄養不良、ストレス、病気、服用中のほかの薬、さらには人生が一変する退職などの変化や出来事といったものだ。主要なリスク因子は遺伝的要因かもしれないが、遺伝子がどのように発現するかを決定づけるのは、遺伝的要因と環境的要因の相互作用だ。

言い換えれば、遺伝的な傾向があったとしても、実際にうつ病が発症するかどうかは、人生でどのような出来事に遭遇するかで決まるということだ。ゆえに、薬物治療が必ずしも適切だというわけではない。遺伝的な傾向があったとしても、少なくとも、最初に取るべき選択肢は薬物治療ではないのだ。

それよりも確実な対処法は、抗うつ剤を処方する前に、まずは心理療法を試してみるよう助言することではないだろうか。適切なカウンセリングを受ければ、患者は、神経症的傾向(うつ病に結びつく性格的な特性で、ふさぎ込んだり、不安や悩み、怒り、不満、嫉妬、罪悪感を持ったりする傾向を特徴とする)を軽減するためのさまざまな方法を学ぶことができる。
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要は、自分はうつ病ではないかと疑ったら、まずはセラピストに相談することを考えてほしい。時間をかけて取り組めば、自分のうつの根底原因を突き止めて、気分が落ち込んだときにどう対処すべきかを学ぶことができる。このほうが、感情を麻痺させる薬を飲んで、問題を覆い隠してしまうよりも賢明だ。

最終的に、自分には抗うつ剤が最も効果的だという結論に達するかもしれないし、それには問題はない。しかし、抗うつ剤が最初の選択肢であるべきではないし、唯一の選択肢であるべきでもないのだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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