IT起業家がサッカーで大実験!イノベーションの移植で目指す「W杯優勝」


「フォースクエアは街や友達がいる場所でコミュニティを築き、人を引き寄せるテクノロジー。その点、ストケードFCも同じ。試合の90分間のために、人を引き合わせる。フォースクエアの方がもう少しデジタル寄りで、少しだけ物理的かな。でも、本質的には同じなんだ」 

フォースクエアでユーザーたちがアプリを使い、コミュニティを形成してきた経験が生きることもわかっている。まだシリコンバレーが圧倒的に強かった頃、クローリーはニューヨークにテック系スタートアップを立ち上げたことで、他の起業家にとっての目標となった。経験者だからこそ、同じことがサッカーでもできると信じている。そうした仲間が増えることで、下位リーグから地殻変動を起こせるかもしれない。現在は実質4部のNPSLであっても、改革を進めていけば、いずれはMLSを昇降格のある競争力の高いリーグに変えることだってありえる。テクノロジー業界で言うところの“ディスラプト(既存業界の破壊)”である。

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2017年シーズンには地区優勝を果たした。

グーグルがアンドロイドのソースコードを無償で開放したことにより、各企業が最適化して市場は広がり、全体がレベルアップしていった。同じように「オープンソース・サッカー」を手本に、誰しもプロチームがつくれるようになれば、MLSを独占的な支配から解放できるかもしれない。

人々の秘めた可能性を見いだす大実験。クローリーのイノベーションが、壮大な「番狂わせ」を演じようとしている。


キングストン・ストケードFC◎2016年創設の男子セミプロ・サッカーチーム。人口約2万人の街、米ニューヨーク州キングストンを拠点に置く。創設者は、IT企業「フォースクエア」共同創業者のデニス・クローリー。将来的なプロ化を目標に、現在は連邦法人所得税免税や寄付税制上の優遇措置を得られる非営利公益法人「501(c)(3)」として登記し、4部のNPSLに参戦している。

デニス・クローリー◎サッカークラブ「キングストン・ストケードFC」創設者兼会長。位置情報データサービス企業「フォースクエア」の共同創業者兼会長。米サッカーリーグ「NPSL」の役員も兼務する。プライベートでも週1〜2回はストリート・サッカー(右サイドバック)をしており、ストリート・サッカーができる場所を検 索するアプリ「The Street」も開発している(日本未進出)。

文=井関庸介 写真=ユアン・バーンズ

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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