「現実的な空飛ぶタクシー」目指すSkyryse、累計42億円を調達

Skyryse

大都市上空でエアタクシーを運行するには、旅客機レベルの安全性では不十分で、エレベーターと同程度の安全性を実現する必要があると「Skyryse」のCEO、Mark Grodenは指摘する。

Skyryseは、都市部での航空輸送をウーバーやリフト並みの価格で提供することを目指している。競合他社が自律飛行によってコスト削減に取り組んでいるのに対し、同社はパイロットが操縦する方式で低価格を実現しようとしている。

ロサンゼルスに本拠を置くSkyryseは、ヘリコプターを格段に操縦しやすくする機能や、安全性を高めたりルートや飛行時間を最適化するテクノロジーを開発している。同社は12月17日、フォード会長のウィリアム・クレイ・フォード・ジュニア(通称:ビル・フォード)などから1300万ドル(約14.2億円)を調達したと発表した。これで同社の累計調達額は3800万ドル(約42億円)に達した。

同日、同社のテクノロジーを搭載した小型ヘリコプター「ロビンソン R44」が自律飛行する動画も公開された。

しかし、Skyryseが目指すのは自律飛行ではない。現在29歳のGrodenは、ミシガン大学で博士号を取得したセンサーフュージョンの専門家だ。ヘリコプターの手動操縦はパイロットに大きな負担を強いるが、Grodenは操縦が簡単にできると同時に、パイロットが危険な操縦をできなくする「フライトエンベロープ保護」を搭載したテクノロジーを開発中だ。

フライトエンベロープ保護は、エアバスやボーイング787などに搭載されている。人間のパイロットが操縦するヘリコプターをより安全に、より静かに、そしてより効率的に飛行させることで、自律飛行に取り組む他のスタートアップよりも早く規制当局から認可を受けられるとGrodenは考えている。

競合にはボーイング、ロッキード

競合では、ボーイング傘下の「Aurora Flight Sciences」が2018年に「Bell UH-1H」を使って無人貨物輸送の実験を行っている。また、ロッキード・マーティンの子会社である「シコルスキー」は、同社が開発したシステム「Matrix」を搭載した中型ヘリコプター「S-76」を発表し、パイロットの負担軽減をアピールしている。

これらに対し、Skyryseが開発を進めている「Flight Stack」は、より包括的な機能を備えたテクノロジーだ。この中には、映画「スターウォーズ」に登場するドロイド「R2-D2」のように、システムトラブルをパイロットに伝えて最適な対処法を教えてくれたり、機体を安定させる役割を担う機能も含まれるという。
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編集=上田裕資

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