LVMHグループが今夏にステラ マッカートニーと新たな提携を結ぶなど、ラグジュアリーブランドにおいても、サステナビリティ・シフトが加速している。
ファッションのバイオテクノロジーやD2Cビジネスに詳しいスペキュラティブ・ファッションデザイナー川崎和也に、業界の常識を変える今年の「ファッションイノベーション・ベスト3」を聞いた。
1. Unmade(イギリス):ニットウェアをカスタマイズするD2C
Unmadeとニューバランスがコラボレーションしたカスタマイズサービス「NB1」のニットシューズ
2013年からロンドンを拠点にするファッションテックのスタートアップ「Unmade」。ユーザーの好みに合わせてニットウェアをカスタマイズできるプラットフォームを持ち、D2Cビジネスを展開している。同社独自の受発注一括管理システム(OMS)によって、製造工場などと連携し、自動的にオーダーメイドができる仕組みだ。
2019年3月にはサイクリングウェアのRapha Racing(ラファレーシング)とサイクリングウェアをカスタマイズできるサービスを開始。10月には、ニューバランスとコラボレーションし、ニットスニーカーの柄や色などをカスタマイズできるサービス「NB1」を発表し、話題となった。2019年7月に475万ポンド(約6.1億円)を資金調達し、事業拡大を進めている。
川崎は「大量生産し廃棄するのではなく、カスタマイズすることで環境にも優しい。独自のソフトウェア開発をしながらも、自分たちのストーリーをうまくブランドとして仕立てて、D2Cビジネスを大きくスケールしている」と1位に選んだ。
2. Spiber(山形県鶴岡市):微生物の発酵過程で生まれた素材を開発
スパイバーとノースフェイスがコラボレーションした「ムーン・パーカ」
化石資源に依存せず、微生物による発酵プロセスによって作られた構造タンパク質の新素材などを開発するSpiber(スパイバー)。2015年からゴールドウィンと共同で研究開発を重ね、2019年8月、その糸を使ってノースフェイスとスパイバーのコラボレーションしたアウトドアジャケット「ムーン・パーカ」を発表した。1着15万円で、50着の抽選販売を果たした。
川崎は「2019年はスパイバー元年」と振り返り、「地球環境にとって良い新素材を開発する『バイオテクノロジー』がファッション業界に導入された成功例となった」と分析した。