ビジネス

2019.12.27

カプコン社長が語る、eスポーツを広める意外な「次の一手」

辻本春弘(カプコン 代表取締役社長COO)

経営環境の変化にグローバル化、テクノロジーの導入など、日本のスポーツビジネスにパラダイムシフトが起きている。このパラダイムシフトを理解し、その先に進むために重要となるキーワードの1つが「eスポーツ」だ。2014年から世界各地で『ストリートファイター』のプロツアーを開催してきたゲームソフト大手、カプコンの辻本春弘にeスポーツの可能性を聞いた。


世界初のコンピューターゲームと言われるATARI社の「PONG」の誕生が1972年。コンピューターゲームが誕生して約40年を経たいま、世界にはすでに数億円の優勝賞金を競うeスポーツ競技大会がある。オランダの調査会社Newzoo社の調べでは、eスポーツの世界市場規模(賞金や大会開催費など)は2019年に10億ドルを超え、22年には17億9000万ドルになると試算されている。ネット配信などによる視聴者数も19年の4億5400万人から22年には6億4500万人に増えると見込む。
 
対戦型ゲームをスポーツとして楽しむeスポーツが、急速に拡大している理由について日本のゲームソフト大手、カプコン代表取締役社長COOの辻本春弘は、「eスポーツは、体格や身体能力の壁がなく健常者も体の不自由な人も、老若男女も分け隔てなく楽しめ、スポーツ本来の『誰もが参加できる』という精神を体現します。だからこそ受け入れられた」と断言する。

eスポーツの多様性、リアルスポーツをしのぐユニバーサル性という優れた“特性”は、スポーツ関係者が無視できないほど認識されるようになってきた。IOCは18年に「eスポーツフォーラム」を開催。「五輪競技としてはまだ時期尚早」としたものの、同年8月のアジア競技大会ではデモンストレーション競技に採用され、19年の茨城国体では文化プログラムとして対抗戦が行われた。
 
eスポーツになじみがない読者に、なじみがなかった筆者が今回の取材で伝えるべきは、「まずは思い込みを捨てる」である。

「オタクの遊び」と言うならば、スポーツに限らず趣味はすべてオタクたちの遊びだ。「部屋にこもった根暗」と感じるならば、一度でも大会会場に足を運んでみるべきだ。観客を巻き込んだ興奮は、想像を超えるだろう。「賞金稼ぎだけのもの」と思うならば、プロとはそもそも賞金を稼ぐのが仕事だ。 「ゲーム会社のソフトを使うのだから、誰もが同じルールでやるものではない」。その指摘は一見もっともに思えるが、リアルスポーツの同じ競技でも各種のカテゴリーがあるように、ソフト別の競技があってもなんらおかしくない。
 
むしろ、「世界で楽しまれているゲームだからこそ世界の人たちが競える。開発者は、より魅力的なゲームづくりに努力しなければなりません」(辻本)
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文=船木春仁 写真=木下智央

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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