では、優秀な選手を確保し、世界で勝ち続けるトップチームをつくるためにどうすればいいのか。ロジックから導き出されたのがグローバルフランチャイズ戦略だった。
FCバルセロナで着想した、世界でフランチャイズクラブをつくるというソリアーノの計画は、「壮大すぎる」「聞いたことがない」と懐疑的な声が多かったという。
FCバルセロナで果たせなかった、この夢が動き出したのは、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ・ユナイテッド・グループがCFGの株式の過半数を08年に取得し、12年にソリアーノがCFGのCEOに就任してからだ。
それから改革を進め、リーグ上位の安定的な強さと収益性を強化。17-18年シーズンにはプレミアリーグ初のリーグ戦18連勝で、3度目のリーグ優勝を達成。翌年のシーズンを2連覇、タイトル4冠に輝く華々しい成績を収めた。
CFGの目標は、「世界をリードするサッカー組織になること」。それを実現するためには、「アジアでトップの存在感を示すことが不可欠だ」という戦略的なロジックがある。「地球上の80億人の多くは、エンターテインメントを求めている。サッカーは引き続き主要なスポーツで新しいサッカーファンのほとんどはアジアから生まれている。日本と韓国は長年にわたり洗練されたサッカー市場で、中国とインドの発展も目覚ましい」。
伝統的に欧州や南米中心だったサッカービジネスだが、ここ数年で様変わりしたとソリアーノは指摘する。「世界中にプロが管理するリーグをもち、アジアで大規模な成長が見込まれる真にグローバルなビジネスになった」。
ソリアーノによると、サッカーとは「エンターテインメントでありコミュニティ、ローカルでありグローバルである」。大きなクラブと選手は、世界的なブランドとアイコンとなって、何百万人ものファンを持つ。同じく、あらゆる規模のクラブはコミュニティに根ざしており、何百万人ものファンに「所属している感覚」を提供できる。そこにはこれまでにない規模のビジネスの可能性が詰まっている。
「サッカーは人生のメタファー。90分のピッチの上の戦いを通じてリーダーシップ、チームダイナミクスなどを学べる。サッカービジネスは洗練された興味深いビジネスで、そのレッスンはほかのビジネスや人生にも生かすことができる。日本は世界的にみても優れたサッカーの国だ。ぜひ日本の読者もサッカービジネスに興味をもってほしい」
フェラン・ソリアーノ◎1967年、スペインのバルセロナに生まれる。起業家、経営コンサルタントを経て、03年から5年、FCバルセロナの副会長を務めた。元スパンエア会長。