春から晩夏にかけては、イールドカーブ(利回り曲線)が逆転する「逆イールド」が起きた。この現象は一般的に、経済の先行きにとっては非常に悪い予兆とされており、この法則が今回も当てはまるおそれはある。だがその一方で、連邦準備制度理事会(FRB)は比較的大胆な利下げに踏み切り、米国の経済指標も、今のところ大部分は持ちこたえている。
「逆イールド」は景気後退の予兆か
逆イールドは一般的に、米国経済の先行きにとって非常に悪い予兆とされる。1年のスパンで見た場合に、景気後退を最も正確に予測してきた指標を挙げるなら、それはイールドカーブだ。2019年は、3月にイールドカーブが逆転したのち、晩夏にかけてその幅や範囲が拡大していった。
これは、今後12か月の間に景気が後退する確率が高まっていることを示す現象だ。このモデルの実績を信じるなら、その確率は33~50%というところだ。とはいえ、時間は刻々と過ぎているが、今のところ米国経済は持ちこたえている。
今回の逆イールドは、景気後退の予兆にはならないのだろうか? その可能性はあるが、まだ「そうだ」と言い切るには時期が早すぎる。過去にも、イールドカーブが逆転し、その後スティープ化(イールドカーブの傾きが急に右上がりになること)したが、それでも景気後退が起きたケースはある。
とはいえ、景気後退の確率は、逆イールドがどれだけ大きいかに連動するというのが、エコノミストの一般的な見方だ。その点で考えると、今のところ逆イールドはそれほど大きくない。
見逃せない失業率の動向
景気後退を示す指標として、確実なものの1つが失業率だ。大まかに言って、失業率が0.5ポイント上昇すると、景気後退に入った可能性が高い。ただし失業率は、景気が後退しつつあることを知らせる他のデータと比べると、先行指標とは言えない。
2019年に入って失業率はむしろ逆方向に動いており、この1年に米国の失業率は0.5ポイント下落した。これは朗報と言える。しかし、失業率の下落には限界がある。というのも、「摩擦的失業」(frictional unemployment:労働需給の一時的不均衡から生じる失業)と呼ばれる、転職するときなどに一定の率で発生する失業があるからだ。現在の米国の失業率は、この下限に近づいている可能性が高い。
過去には、失業率が1951年から1953年にかけて2.5%に、1968年から1969年にかけて3.4%にまで低下した事例がある。1950年以降で、現在の水準より失業率が低かったのは、この5年間だけだ。つまり、過去の事例を見る限り、今後2年ほどの間に失業率が上昇を始める可能性は非常に高いということになる。