こうした“嫌がらせ”は、より根深い問題が引き起こしている症状の一つだ。その問題とは、経済の時代が急速に変化し、それが一部の人の生活を混乱に陥れていることだ。農業経済は産業革命によって工業の時代に道を譲り、その時代はさらに、緑の革命とそれを推進するデジタルテクノロジーの時代に取って代わられようとしている。
この新しい経済によって米国で最も大きく影響を受けているのは、石炭産業に依存してきたアパラチア地方だ。この地域を支えてきた産業の衰退は、「電力はよりクリーンで価格の手ごろな燃料で」という経済の変化を表している。つまり、工場や鉱山での仕事は、STEM(科学・技術・工学・数学)を軸とした仕事にその地位を奪われたのだ。
だが、トランプはそれでも石炭に執着している。歴史学者のブレイク・アールはワシントンポスト紙への寄稿の中で、これについて次のように指摘している。
「トランプにとって石炭への執着は、エネルギーに関わるものというよりも白人男性にとっての男らしさ(力強さ)の問題だ。そうした考えを持つのは、トランプだけではない──20世紀を通じて、米国の白人たちはアパラチアの山に暮らす男たちを理想的な米国人男性だと考えてきた」
アールはまた、「トランプは、白人であることの価値が失われたと感じている白人男性の怒りを食い物にしている」と書いている。
「彼らはグローバリゼーションによって、そして8年間にわたって大統領が黒人であったことによって、社会の隅に追いやられたと感じている」
本当に怒っているのは誰か?
そう考えれば、取り残されたと感じている人々に16歳の少女がどのような強い感情を引き起こすか、より容易に理解できようになる。トランプはトゥンベリの功績に「ばかげたもの」とのレッテルを貼り、彼女は「怒っている」と言い続けている。だが、怒っているのはトランプの方だ。