経済・社会

2019.12.24 17:00

中曽根康弘回想録。国会議員の孫・康隆が明かした101歳の元首相、最晩年の姿


外遊先で見せた、政治家の顔

祖父が中国とアメリカに外遊する際に、私も連れて行ってもらったことがあります。私が24、25歳の時だったと思います。

祖父が私に何かを残そうとしていたかはわからない。しかしいま振り返れば、私が政治家を志す1つのきっかけになったのは間違いないです。外交や安全保障、そして憲法について、10代の頃から意識させてくれた。私の頭の中のスケールを「国家」について考えるまで引き上げてくれていたのだと思います。

このときにホワイトハウスにも随行し、当時のチェイニー副大統領と祖父が堂々と話をしている様子を見ました。中国でも胡錦濤元国家主席、習近平現国家主席など中国のリーダーたちと会談をしていて、トップ同士の信頼関係が両国の関係強化につながるということを真横で見せてもらった。こういった祖父との時間は政治家を志す1つのきっかけになったし、いま私が力を入れている外交関係にも繋がっています。

外交といえば、レーガン元大統領との「ロンヤス関係」は有名ですよね。僕がある日、犬を飼い始めると、祖父にどんな名前がいいか聞いたら、ロンにしろと(笑) 。やはりそれくらい仲が良かったんですよね。そんなチャーミングな一面もありましたね。

中曽根康弘と孫・康隆
中曽根康隆(左)が2017年初当選を報告後、康弘は笑顔も見せた

私は民間企業で働いていましたが、政治家を志すと決めたとき、祖父にその思いを伝えに行きました。すると、「チャンスは待っていても来ないから自分で掴みにいけ」と言われました。結果、望んでいた選挙区での出馬は叶いませんでしたが、この言葉があったからこそ、自ら全力でチャンスを掴みに行けたと思います。

初当選後、祖父に挨拶に行き、「おかげさまで当選したよ」と報告しました。普通なら最初から笑顔で迎えますよね。けれど祖父からは開口一番に「歴史を勉強しなさい、浮かれてる場合じゃない」、と厳しい目で言われました。

政治家の仕事は、国の未来への種まきだから、先見性と大局観を持った決断が必要です。先を見通すためには、過去を知らなければならない。歴史をしっかり勉強してほしいという祖父の思いがあったんでしょうね。
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文=初見真菜、督あかり

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