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シネマ未来鏡


2.「COLD WAR あの歌、2つの心」 パヴェウ・パヴリコフスキ監督

実は、筆者が裏の裏まで返した数少ない作品だ。主にポーランドを舞台にした映画ながら(ポーランド・イギリス・フランス合作映画)、アカデミー賞の監督賞、撮影賞など3部門でノミネートされた。全編がモノクロームで表現されているのだが、記憶のなかで蘇るときは、何故か鮮やかに彩色されている(もちろん、筆者だけの体験かもしれないが)。


「COLD WAR あの歌、2つの心」

舞台は、東西冷戦時代のヨーロッパ。ポーランドから始まり、ベルリン、パリ、ユーゴスラビア、パリ、ポーランドと舞台を移し、その間、互いに惹かれながらもすれ違っていく男女の物語が、端正に描かれていく。

男女の出会いはポーランドの民族歌謡舞踊団のオーディションだ。音楽家でもあるヴィクトルは、応募者の若い女性ズーラの声に魅せられ、やがて複雑な事情を抱える彼女を愛するようになる。舞踊団のメンバーとして、東ベルリンでの公演に出かけた2人は、示し合わせて西側へ逃れようとするが、約束の時間にズーラは現れなかった。

パリで映画音楽の仕事を得ていたヴィクトルは、ジャズクラブでもピアノを演奏している。その彼のもとに2年ぶりにズーラが現れる。何故、東ベルリンで一緒に行かなかったのかをヴィクトルに伝えるズーラだったが、2人の会話は、ぎこちないものとなっており、彼女はまたポーランドに戻っていく。

この後、ユーゴスラビア、そしてまたパリへと舞台は移り、2人は束の間の甘い生活をともにするのだが、幸せな日々は長くは続かない。東西冷戦の時代、恋人たちの間に立ちはだかる障壁は巨大だ。それが大きければ大きいほど情熱は滾る。国際政治に翻弄されるラブストーリーはどこまでも劇的だ。最後のラストシーンには誰もが心を震わせられる。DVDで観賞が可能。

3.「アド・アストラ」 ジェームズ・グレイ監督


(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ブラッド・ピット主演の宇宙を舞台にしたSF作品。題名はラテン語で「星の彼方へ」の意味だ。月面探査車などによるカーチェイスシーンなども登場するが、全体的には、主人公の内面に斬り込んだ哲学的内容ともなっている。プロデュースにもメインで名を連ねるブラピとしては、明らかに賞レースを意識した作品と思われる。

物語は、グレイ監督が明言しているように、ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」(フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」の原作)を下敷きにしており、太陽系の海王星近くで消息を絶った父を探す主人公の孤独な旅路と、彼の心の闇を照らしていく内容となっている。

アメリカでは「ジョーカー」の2週間前に公開されたが、初週の週末興行成績では第2位に甘んじ、その後、「ジョーカー」の封切り2週間後にはベスト10から滑り落ちている。公開時期が悪かったのか、なかなか一般受けはしなかったが、自分的には「裏を返した」観応えある作品だと思っている。

何より、広大な宇宙を前にして、人間はいかに思索的になるかという、スタンリー・キューブリック監督の映画史の金字塔「2001年宇宙の旅」にも通じる、シリアスな内容を感じさせる作品だ。これまで俳優としての受賞歴がないブラピが、アカデミー賞にノミネートされるかも気になるところだが、年明けにはDVDも発売されるということで、この作品の真価があらためて問われることを期待したい。

文=稲垣伸寿

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