世界を目指す「社内発イノベーション」事例

帝人ファーマ在宅医療事業企画部・丹羽大介氏

11月26日、帝人ファーマ 在宅医療企画技術部門 在宅医療事業企画部の丹羽大介氏は、社内で行われたDemoDayを固唾を飲んで見守っていた。

7月に始動し、「在宅医療QOLコラボレーション:帝人ファーマ×アドライト アクセラレータープログラム」として展開されたこのプログラムでは、AMI、エーテンラボ、キママニの3社がHome Healthcare Awardを受賞した。彼らを中心とした選抜企業5社は、今後帝人ファーマと新規事業創出に向けた検討をしていく。

在宅医療のためにできること

およそ1年前、在宅医療のリーディングカンパニーとして名を馳せる帝人ファーマは、ある社会課題と向き合っていた。65歳以上が人口の3人に1人、75歳以上の後期高齢者が6人に1人となることにより引き起こされる「2025年問題」だ。

54兆円にものぼるとされる医療費(厚生労働省)の増大には高齢者の慢性疾患も関係する。悪化を防げばある程度医療費負担は軽減する。そのために病院完結型医療から地域完結型医療への転換、つまり在宅医療が加速度的に進むとされている。

在宅医療を必要とするのは高齢者だけではない。睡眠時無呼吸症候群や気分障がい(うつ病、躁うつ病)、慢性閉塞性肺疾患、脳卒中麻痺、がん患者等も含まれる。

帝人ファーマは医師の指導のもと呼吸器をはじめとする医療機器を提供し、患者へのサポートを行う部分は得意だ。では在宅医療が多様化するなか、より患者のQOL(Quolity Of Life)に寄り添えるものとは何か? なかなか打開策が見つからないなか「外部の知恵」がキーワードとして挙がり、オープンイノベーションに舵を切ることになった。

募集対象はスタートアップとした。尖った技術や考えを持ち、スピード感もって動く彼らは医療・医薬業界と何もかも真逆と感じたからだ。

始動にあたっては、昨年11月、米国を中心とする医療機器スタートアップとの提携および新規事業の企画・立上げ等に従事していた在宅医療事業創造部長・大西秀忠氏が起案。丹羽氏を連れ立ってオープンイノベーションの支援企業やVC等5、6社にヒアリングをかけた結果、自社にフィットするのは事業共創型と気づいた。


帝人ファーマ 在宅医療事業本部 在宅医療開発推進部長・大西秀忠氏

在宅医療分野で他の企業と一緒にアイデアを考え、知恵を絞りながら新しいプロダクトを生み出せるようなアクセラレータープログラムでいこうと、在宅医療企画技術部門長・中川誠氏に掛け合った。

とはいえ、1社単独でのアクセラレータープログラムは初の試み。手広くやろうとすると関係各所も増え、スピードよく進めるうえでの支障が噴出する可能性が高まる。そこでとった手法はスモールスタート。中川氏をプロジェクトオーナーとし、同氏の決裁範疇で進めることにした。さらに技術部門主導で進めれば、ある程度社内のカニバリズムとの見極めができる。

「他社のアクセラレータープログラムの結果はどうなっているんだ?」「この取り組みでいくら売上を上げるんだ?」「そもそもやっても意味がないんじゃないか」──起案時に社内から出た意見に対し、明確に打ち返せたわけではない。

文=佐藤 奈津紀

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