──具体的な取り組みはもう始まっているのですか?
これまでECはありましたが、リテール(小売)が中心、デジタル面での取り組みには大きなフォーカスをしていませんでした。CRMといっても、DMやメールを送ることはあっても、消費者のライフステージのタイミングやニーズに合わせてコミュニケーションをするといったことはやっていませんでした。イチから立ち上げることになります。
まずは、ファーストパーティデータと言われる消費者の行動データを取得し、それをもとにどのようなお客様がどこで、どんなニーズを持っているのかを具体的に理解することから始めます。
一般的な消費材メーカーならば、商品を買った人のデータをトラックして、その人にマーケティング施策を行うことになります。ゴディバはギフトブランドなので、買っていただいたお客様だけではなく、そのお客様から受け取った方までが対象になります。対象が幅広いので、購買者以外の方のデータもうまくトラックできる方法でマーケティングを行いたいと思っています。
「デジタル担当はどの会社においても、しいたげられるポジションになることが多い」という宮野氏。「幸運なことに、ゴディバは現在トップの理解もあるし、全員一緒に巻き込んでできる環境にあります」と笑う。
贈り物でもらった人に、食べて気に入っていただけたらお店に来てもらうようにすることも考えられますし、同じ購買者でも誕生日のギフトなのか、BtoBなのかによりニーズと商品は違うので、それを振り分けた上で最適な情報、最適な商品を、店舗やECを通じて、あるいは広告を通じて提供することが大切です。
データの収集や追跡では、アプリを活用する他、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)を利用して、Webサイトにきた時点でタグから情報を取得することもできます。それをアプリのロケーションデータと紐付けたり、アンケートデータ、購買データなどと紐付けることも考えられます。このようにして、データを可視化していきます。
──デジタルでゴディバらしさをどのように表現するのですか?
デジタルに閉じることは考えていません。百貨店、ショッピングモール、アウトレットモールを含めて最適なジャーニーを選ぶべきと考えており、ECはその1つとなります。
取引先へのギフトなら百貨店がいいかもしれないし、自分用にすぐに食べたいのなら近くのコンビニかもしれない。お客様のモーメントに合わせて、最適なチャネルを提供します。ゴディバは販路が広く、認知度も高く、商品力があるため、とても有利です。
デジタルトランスフォーメーションがきちんとできているところは少ないので、デジタルトランスフォーメーションの取り組みがうまくいけばゴディバにしかない体験を提供できると確信しています。
テクノロジーが可能にしてくれることはたくさんあります。例えばIDを1つにする”One ID”化。Web上の行動はクッキーで紐づけることができます。アプリをダウンロードしていただき、メンバーシップに登録いただいて来店いただくと何かメリットがあるようにするなどのことができます。