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地方発イノベーションの秘訣

国連といえば、災害があると、テントや毛布や食糧を配ったり、子どもたちにワクチンを接種したり、昔と変わらぬ人の手を介した仕事をしているイメージを持つ人が多いかもしれない。ところが、デジタル時代になって、開発途上国での現場が変わりはじめた。

例えば、救援物資の配給やワクチンの接種では、指紋だけでなく生体認証で個人管理をしたり、問い合わせには人工知能が応えるコールセンターが使われたりする。

2015年のネパール地震では、9000人が犠牲となり、住宅72万戸が倒壊したが、国連は、スマホアプリで地震直後の家屋倒壊などの状況を収集し、復興期の住宅再建を把握した。テクノロジーを使いこなせるかが、復興の鍵を握っていたのだ。

ところが、国連自体は、直接この手のテクノロジーのノウハウを持たないので、それを得意とする企業とうまく連携しなければならない。2030年までのSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、テクノロジーをどう導入しようとしているのか──。

神戸を軸とするこの連載だが、今回は、神戸が来年国連と取り組むプロジェクトの前段として、国連の取り組みについて紹介したい。

テクノロジーに強い組織「UNOPS」

11月21日、ヘルシンキで毎年開かれる世界最大級のスタートアップイベント「Slush」に、国連としては初めて、グレテ・ファレモ国連事務次長兼UNOPS(ユノップス:国連プロジェクトサービス機関)事務局長が登壇した。


グレテ・ファレモ国連事務次長兼UNOPS事務局長 (c) Otto Jahukainen

「世界規模の困難な課題を克服するには、アントレプレナーシップを持ち、テクノロジーで既存の枠を打ち破ろうという欲求を持つあなたたちの力が必要だ」と、彼女がメインステージから会場の起業家たちに呼びかけると、万雷の拍手が沸き起こった。

彼女が事務局長を務めるUNOPSは、国連の中でも、最先端テクノロジーの活用に熱心な機関だ。ほとんどの人は聞いたことがないだろうが、実はこの10年で予算額が約2倍と、かなり重要視されている国連機関なのだ。もともとはUNDP(国連開発計画)の調達部門であったが、1995年に独立すると、他の国連機関や政府等からもプロジェクトを任されるようになった。

国連機関としてよく耳にする、UNESCO(国連教育科学文化機関)やUNICEF(国連児童基金)が、それぞれ「教育、科学、文化」や「子どもの権利」と活動分野が限られるのに比べ、UNOPSは、あらゆる分野で活動する。

それゆえ、他の機関では手に負えない仕事も舞い込み、いまやプロジェクト推進のプロ集団となった。災害が起こったときに、機敏に現場に入り、柔軟な支援活動を行うことでも知られている。

文=多名部重則

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