人とのつながりは多いほどいい? これからの「幸福マネジメント」

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多くの人が幸せな人生を願っている。「幸せ」の実現には、暮らしを支えるさまざまな社会的基盤が必要だ。

しかし、それらが整うことは、幸せ実現のための必要条件だが、それで誰もが幸せになるわけではない。同じ状況下にあっても、幸せを実感できる人もいれば、そうでない人もいる。主観的幸福度は、個人の価値観や意識に大きく依存しているからだ。

幸せは、現実の状況と個人の期待値との相関関係や時間軸によって、大きな影響を受ける。ただ、個人の幸せへの期待値は、自らの価値観やライフスタイルによって決まるものだ。それゆえに、自分自身で幸せな状況をマネジメントすることも可能になる。

「幸福度」を左右するものとは何か

内閣府の「国民生活選好度調査」では、国民の主観的幸福度を「とても幸せ」を10点、「とても不幸」を0点として、「あなたはどれくらい幸せですか?」と問うている。

10点と回答する最も幸せな人とはどのような人だろうか。それは客観的に最も恵まれた人というよりは、「幸せ」を感じとる感受性を備えた人ではないだろうか。人間の欲望は限りなく、「幸せ」が常に拡大していくものであるなら、主観によってその限界を設定しなくてはならないからだ。

幸福度に関する文献を読むと、人が幸せになるには、あまり人生の細部にこだわらないことが重要らしい。自分の将来に明るい期待を持っていること、他の人と比較しないこと、人に感謝することなどを心掛ける人は幸福度が高い。

また、楽観的な生き方も、「幸せ」をもたらすという。フランスの哲学者アラン(1868〜1951年)は、93編のプロボ(哲学断章)からなる「幸福論」のなかで、「悲観主義は感情によるが、楽観主義は意志の力による」(第93編)と述べている。

まもなく東日本大震災から9年になる。被災地で懸命に立ち上がろうとする人たちのなかに笑顔を見つけたとき、アランの「幸福論」の「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」(第77編)を思い出す。日本でも昔から「笑う門には福来る」ということわざがあるが、幸せの実現には、「笑う」という自らの意志による「幸せ」のマネジメントが重要なのではないだろうか。

人が幸せになるための6つの要素

人が幸せになるために必要な要素とは何だろうか。もちろん主観的幸福度は、個人個人でその内容が異なるが、ある程度共通した要素がある。

トム・ラス、ジム・ハーターが著わした「幸福の習慣」(原題は「WELLBEING」)」では、人の幸福を決定するのは、「仕事の幸福」「人間関係の幸福」「経済的な幸福」「身体的な幸福」「地域社会の幸福」の5つの「幸福」だとしている。

「仕事の幸福」では、仕事は日々のなかで最も長い時間を費やすもので、その人のアイデンティティをつくり上げる重要なことと位置づけている。ちなみに、ここでいう仕事とは、収入を得るための仕事だけに限ってはいない。

次に、「人間関係の幸福」では、幸福は次々と周囲の人に影響を与えるため、個人で完結するのではなく、家族や友人との関係性が重要であるという。「経済的な幸福」では、経験と思い出にお金を使うと、「人間関係の幸福」も満たされて幸福は持続するとしている。「身体的な幸福」では、運動の習慣化と睡眠が、ストレスを減少させて幸福度を高める。そして「地域社会の幸福」では、自分が住む地域社会をより良くするための活動に参加することで、自らの幸福度も向上するとする。
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文=土堤内昭雄

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