渋谷区から始めるコレクティブ・インパクト


本事業は名古屋市役所の丸澤さん(市民経済局 地域振興部 地域振興課)が、渋谷まで「つなげる30人」のヒアリングに訪れたことから始まった。

丸澤さんは元々民間企業出身でNPOでのボランティア活動も経験され、行政職員としては、ここ数年は地域コミュニティの活性化事業に取り組んできた。その中で、町内会・自治会の加入率の低下、地域活動の参加者の減少、担い手不足など地域コミュニティの希薄化という現状に直面していた。

一方で、民間企業や市民セクターが主催する様々なまちづくりイベントなどに積極的に関わる中で、若い世代でも社会課題・地域課題に関心を示し、自分事として取り組もうとしていると実感。

「イベントの場での盛り上がりを継続させていくにはどうすれば良いか」「出てきた魅力的なアイデアを、実現に向けて第一歩を踏み出すにはどうすれば良いか」「行政任せなアイデアが出てきた際に、どのように受け取れば良いのか」と頭を悩ませていた。

しかし同時に、この民間の力や思いを行政や地域コミュニティと掛け合わせる事でさらに可能性が拡がるのではないかと感じていた。

もっと各セクターの連携がうまくいけば、実効性と継続性が高まり、地域はもっと面白くなる──。そう思っていたタイミングで「渋谷をつなげる30人」の取り組みを知り、可能性を探っていくことになる。

仮説が確信に。そして説得へ

「渋谷をつなげる30人」第3期が運営されていた2018年、丸澤さんは、プロジェクトに参加した渋谷区、NPO、企業の20代〜40代のメンバーに丁寧にヒアリングを行っていった。

そこで、参加者がプログラムを通じて「渋谷区」のことを好きになっているのを知った。また、プログラムが終わっても、活動や関係性が自主的に続いていたり、参加者が次期プロジェクトのサポートも行っているのを目撃し、仮説が確信に変わっていった。

この思いをどう役所内に伝え、理解を得ていくか。そもそも、名古屋市の市民経済局としても、地域コミュニティの希薄化に関しては強い問題意識があり、大きな方向性に関しては理解を得ることができた。しかし、「なぜ30人なのか」「市(名古屋市の住民は約230万人/渋谷区は約23万人)ではなく、区という単位での実施が適正規模なのではないか」という意見も出た。

そこで、渋谷で成功した「落書き消しプロジェクト」などわかりやすい事例をあげながら、ただ30人がつながるだけでなく、30人が様々な未来のステークホルダーをつなげていくのが本事業の主旨であることを提示。

また、アイデアを実現していくための適正数、かつ多様性を担保できる最小数が30人であることを丁寧に説明し、理解を促した。同時に、市役所内部に賛同者(応援者)を増やし、予算化に向けて動き出すことが出来た。

とはいえ、どんなに良いプロジェクトであっても書面だけでは理解しにくい。そこで、2018年度内に、「官民協働による地域課題解決策のアイデアソン事例等勉強会」と題した勉強会を企画し、渋谷のメンバーをゲストに迎え、官民協働による地域コミュニティ活性化の可能性について検討を重ねていった。

文=加生健太郎

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