まずはカウンターで待ち合わせ。「ル・リュビ」で楽しむ典型的なビストロ料理

Le Rubis(ル・リュビ)


頻繁ではないものの、たまに前を通り掛かれば中を覗いていたのだが、今年に入って、なんとなく1人でごはんを食べに行ってみよう、という気になった。

昼時に何度か見かけた、店の前の樽を囲みながら飲んでいる人たちの雰囲気に、前よりも活気があるように感じたことがあった。私がこの店でそれまでに見ていた客層からすると少し若く(といっても30代後半から40代くらい)賑わっているなあ、なんだか元気な感じだなあと思ったのだ。

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ランチタイムのカウンター

チュイルリー公園の端にある写真美術館を訪れたあと、ランチタイムも終わる頃に行くと、すでに客足はひけて、ほとんどが空席だった。そして、カウンターの中で立ち働く男性の容貌は、疑う余地もないほどに、経営陣が変わったことを示唆していた。

ただ、内装は変わっていない。以前から掲げられた、フォントが時代を語るようなメニューもそのままだ。でも、日替わり料理も書かれた黒板メニューのほうは、前と同じかは思い出せなかった。並んでいるのは、ポロネギのヴィネグレットソースや、アンドゥイエットなど、典型的ビストロ料理だった。

オーナーが変わって3年

鴨のコンフィが食べたい気分だったけれど、その日はなくて、リヨン風ソーセージにポテトのソテーとサラダが添えられたメインを頼んだ。余計なことを考えなくていい、なんてことのないひと皿が出てきて、つくり込んだ感のないことに私は安心した。

食べ終わってからカフェを注文し、少しカウンターの様子を見ていた。時間が時間だったこともあって、入ってくる人は、皆、カウンターで1杯カフェやワインを飲んでは去っていくのだが、どの客も、店のスタッフと日常的に会話をしていることが窺えた。

会計をするタイミングで訊ねてみると、もうオーナーが変わって3年になると言われた。前回来てからそんなに経っていたのかと驚いた。少し話をしてから、「今日、本当は鴨のコンフィを食べたい気分だったのだけれど……」と伝えたら、コンフィは土曜に出すことが多いと教えてくれた。

それから、たまに行ってみるようになった。昼時の賑わいは、なかなかのものだ。12時半を過ぎると、途端にカウンターが混み合い始める。食事の待ち合わせを、まずカウンターでする常連が多いからだ。先に着いたほうは1杯飲みながら待ち、相手が来るとグラスを合わせつつ挨拶から始まる会話を済ませ、ひと段落ついたところでテーブルに移動する。

この店にはカウンターにスツールを1つも置いていない。だから、全員立っているのだが、なんだか昼間から楽しげに見える。そんななか、店主はカウンターの内から徐々に埋まるテーブルに目を配り、立ったまま話に花を咲かせているお客たちに、「食事もする?」と声をかけて彼らの席を確保する。ランチの客は70%が常連だという。
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文・写真=川村明子

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