ビジネス

2019.12.27

武道具でO2O、そしてサブスクまでもくろむ、若き剣士の熱量


武道でサブスク?したたかに“一本”を狙う戦略


「この店の“売り”はフィットです」

防具でフィットとは? 一般的には「軽い」ことが動きやすくて良い防具という印象があるが、実はそうではない。面や甲手などが身体に馴染むこと、すなわち「軽さ」よりも「フィット感」が重要だと峰守は言う。

加えて肝心の竹刀だ。剣道経験者ならお分かりかもしれないが、竹刀というのは一見同じように見えて個体差がかなりある。竹=自然のものを使うためだが、日本産の真竹と、真竹の生育減少から増えてきた台湾産の台湾竹ではそもそも厚みや性質が違う。

組み合わせた竹に革をかぶせ柄をつくる職人
竹刀は店内で組み立てくれる。その後、試打しバランスを整える。

「竹も生き物ですからね。厚みが違えばしなりも重さも違う。竹を四枚合わせて柄(つか:手で握る部分)を付けツルを張り、竹刀にして降ってみないとバランスも分からない。平均的なお店では竹だけで竹刀を注文しますが、私たちは組んだ状態で店頭に出し、竹を選び、組み、試打もできる。すでに、セミオーダーに近い仕組みを入れています。要はフィット感。今までの剣道は既製のサイズ感だけで道具を揃えることが多く、本当に自分に合っているのかに疑問を持つ剣道家は多いんです」

そして、したたかな次の一手へ


「昨今の物販の潮流の一つであるオフラインtoオンライン(O2O)を予定しています。防具の世界では珍しい。試打し、竹刀以外も採寸し素材も選ぶ。フィット感を得て、あとはオンラインで継続して注文いただく仕組みを考えています」

また、ばんとう武道商店は、年間延べ人数で約20万人の武道家が訪れる神奈川県立武道館の目の前だ。最高の場所にある店舗はO2Oの後押しにもなる。

「剣道の多くの大会がこの武道館で行われ、日本全国から剣士が集まる。剣道を愛する競技者のニーズに的確に応えることができる小売店が少ない中で、まず、剣士たちが必要としている“良い道具が買える店”がここにあるということなんです」

剣道は、KENDOとして特にヨーロッパで人気が高まっているという。オンラインでの武具の販売は海外にも有効だ。そのために海外の剣道家に来店してもらう武道ツアーも計画中だという。

「そして、今模索中なのが、竹刀のサブスクです。私が競技者だったからこそ、そして物の良さや商流が分かっているからこそ、リスクも見えています。実現はさせたいですね」

剣道は多彩な足さばきからの連続技が醍醐味の一つだが、峰守の施策の打ち方もその印象がある。彼と剣道の今後に期待したい。

文=坂元耕二 写真=西川節子

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