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2019.12.27

武道具でO2O、そしてサブスクまでもくろむ、若き剣士の熱量


旧態依然の小売店との差別化に


武道具を扱う店舗は、昔ながらの小さなお店やスポーツ店まで含めると日本全国に存在し、決して少ないわけではない。打って出るのに楽な戦場ではないだろう。

「確かに、武具店は数そのものは決して少なくないです。しかし、ニーズに応えられる小売店は圧倒的に少ないと私は感じています。スポーツの高度化で、競技者の身体の違い、プレースタイルの違いで選ばれる用具が変わる時代です。特に剣道は防具を身に着けて行いますし、総重量が他競技と比較しても重たいわけですから、慎重に選ぶ必要があります」

多くの小売店が、剣道家が店にいない場合や身体の個体差に対応できない既製品の販売が主であるケースが多いという。

「私は、長い剣道経験からお客さんとの対話を重視し、身体にぴったり合う防具を突き詰めます。問屋をはさまず直接工場にオーダーでき、正確に製造できるバックボーンがある。それがニーズに応えるということだと考えています」

ばんどう武道商店の店内
ばんとう武道商店は、高級な装飾が施された防具など、広い世代に対応する商品を並べる。

競技者としての経験と丁稚奉公での学びが、現状を再認識させ、課題を浮き彫りにさせた。峰守は当然ただの小売店を目指すわけではない。上述の栄光武道具の言葉にもあるように、剣道にはチャンスがある。

「剣道は少子高齢化の影響を受けにくいと考えています。なぜなら、年齢の影響を受けるスポーツというのは“競技性”が高いんです。どの競技も競い合うことで結果が決まるのですが、剣道においては、芸術性や、精神性が強い。武道全般に言えることですが、剣道は特にこのバランスが取れているんです」

竹刀を手に取る筆者
豊富な竹刀の数に圧倒。試打も可能。来店する競技者の評判は良い。

若い頃は競技としての剣道、歳を重ねて鍛錬する場として、また、防具に宿る芸術性を追うことなど、剣道の魅力は息が長い。

「LTV(Life Time Value)が長いんです」

加えて、剣道は地域との密着の歴史がある。剣道教室という地元の先生たちのおかげで、剣道は長い間子どもたちと共にあった。中学生の体育の必修化もあり、多くの人が接するスポーツだ。精神性、スポーツの流行に影響されにくい環境が次世代を繋ぐ役割を果たしている。この背景は、付加価値のあるサービスや商品を提供する場として最適だろう。
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文=坂元耕二 写真=西川節子

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