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若き“剣士”が武道具の小売業に斬り込んだ。

「ばんとう武道商店」の峰守慶は、6歳から剣道の道を歩み続ける生粋の剣士。そして、2019年春に社会人から一転、起業した。現在「計画を上回る成長となっていて順調です」という。

同店は、剣道の防具・竹刀を中心に、弓道具なども販売する武道具の小売店だ。横浜にある小さな(失礼)店舗は自ら内装を手がけ、武道のイメージよりもセレクトショップに印象が近い。

峰守はヘルスケア系の情報メディア、HRスタートアップ企業のグロースに携わってきた。その知見を生かしながら、武道具というニッチなジャンルで、古き体質、広がりにくい市場に挑戦し続けている。

今どき丁稚奉公? 相手の懐に入る発想は剣士ゆえか


会社勤めから若くして起業。この世代に珍しいことではない。ただ峰守が少々ほかと違うのは彼が最初にしたこと、それは昔で言うところの“丁稚奉公”だ。

「剣道に限らず武具の業界はスニーカーブランドなど他のスポーツ用品の世界と違い、業界の構造や職人の存在など、少し特別な世界です。今までずっと剣道をする側で、商売のことは分からない。ならば──ということで、修行させてほしいと埼玉の栄光武道具さんに飛び込みました」

インタビューに応える峰守さん
峰守 慶|ばんとう武道商店店主。1993年生まれ。剣道四段。2019年3月に同店を立ち上げ、旧来の武具店にない仕組みを生み出そうとしている。

栄光武道具という会社は、小売はもちろん卸、製造まで手掛ける武具業界では有名な企業だ。その品質は折り紙付きで峰守にとっては最高の学びの場所だった。

「お声がけさせていただいた時、栄光さんは『剣道はチャンスがある世界。学びたいという若手がいるなら話してみようじゃないか』と言ってくださった。発展するなら共にという、若い世代への期待も込められていたのだと思います」

ものを作る、売ることは、その世界に入らないと何も分からない。商流は商売の数だけ存在し業界地図は外から決して分からない。新しい試みやスクラップアンドビルドも知らなければまず進まない。

峰守は、30歳も見えてくる歳で行動した。その様は愚直とも、時代じゃないとも言える。まったく武道をされる方は、どこまで律儀なのかと思ってしまう。しかし、重要な決断だった。

文=坂元耕二 写真=西川節子

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