森美術館は2020年からどう変化するか? 新館長・片岡真実の新たな挑戦

森美術館 新館長・片岡真実

2020年1月1日、東京・六本木の森美術館の新館長に就任するのが、片岡真実だ。

そして22年まで、世界の近現代美術館が共有する制度的課題、コレクションと展覧会などについて協議する1962年創設の「国際美術館会議(CIMAM)」の会長を、欧州圏以外から初めて務める。

片岡は、大学在学中に留学した米国で現代美術の洗礼を受け、卒業後、ギャラリーや美術系出版社勤務、シンクタンクでの美術館立ち上げ事業を経て、キュレーターの道へ。

最近では、総入館者数が66万人を超え、森美術館歴代入館者数第2位の記録を打ち立てた、現代芸術家:塩田千春の個展「塩田千春展:魂がふるえる」展を企画したことが記憶に新しい。

日本ではまだ珍しい女性館長と、欧州圏以外から初のCIMAM会長というポジションを、どのように捉えているのか。新たな挑戦へのエネルギーの源に迫った。


━日本では「女性館長」ということも話題のひとつに挙がりますが、館長就任にあたっての率直なお気持ちを教えてください。

注目していただくことはありがたい一方、「女性が」ということが珍しくない時代に早くなって欲しいと思います。欧米だけではなく日本を除くアジアでも、女性館長は珍しくありません。日本はやはり、そういう面では遅れをとっています。

私自身の経験を振り返ってみても、キュレーターになる前の20代後半頃、「東京オペラシティ」に新しいギャラリーをつくるプロジェクトに参画していたのですが、大手企業の男性陣がずらりと並ぶ中、ずっと一番の若手で唯一の女性でした。

そんな中で、現代アートの意義や国際的な位置づけについて、理解、共感してもらえるように訴え続けてきた。それは、現代アートに馴染みのない人に対して、現代アートについて語る、いい訓練になったと思います。

今回の私の館長就任のニュースにおいて珍しいことがあるとすれば、「女性館長」ということより、「17年間務めた森美術館で、館長になる」ということではないでしょうか。

世界の美術館業界では、ヘッドハンティングも頻繁にあり、人材が流動的です。なので、多くの新館長は、就任と同時にその美術館を知ることから始め、自分なりの美術館像を実現するための組織づくりを一からやらなければなりません。

その点、私の場合は森美術館に17年いますから。この美術館のことをよくわかっているので、知るという難しさはないですね。

一方、知り尽くしている美術館や組織を、次のレベルに牽引していくことはどういうことなのか。それは別のチャレンジになると考えています。
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構成=伊勢真穂 写真=小田駿一

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