「臨床試験」をAIで効率化するスタートアップの挑戦

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医療機関をつなぐマーケットプレイス

Brusselaersは、シダーズ・サイナイ医療センターでの事例も紹介した。それによると、心臓病の研究に適した患者を探すのに、従来の手法では6ヶ月をかけて2名しか見つけることができなかったのに対し、Deep 6のソフトウェアは1時間以内に16名の候補者を抽出したという。

「現状、臨床試験の90%が延期されており、医療のイノベーションを停滞させているだけでなく、治療薬の完成を待ちわびている患者の生活に多大な影響を及ぼしている」とBrusselaersは話す。

Deep 6のソフトウェアは、医療システムのデータレイヤーの上層で動作するため、同社が患者の個人情報にアクセスすることはできない。Deep 6は、顧客企業からソフトウェアのライセンス料を得ている以外に、製薬会社や医療機器メーカーと医療センターを繋ぐマーケットプレイスを運営し、取引が成立した場合に手数料を徴収している。

臨床試験にAIを活用している企業は、Deep 6以外にも数多く存在する。例えば、病院用システムを手掛ける「Health Quest」は、IBMワトソンの臨床試験マッチングツールを利用している。また、ニューヨーク本拠のスタートアップ「Antidote」は、AIを用いて患者が参加できる臨床試験を簡単に探せるサービスを提供している。

創薬における他のプロセスにAIを活用する企業も多い。例えば、「Insitro」はAIを使って新薬候補を見つけ出す作業を大幅に効率化した。

現在、Deep 6の従業員数は42名だが、調達した資金を使って営業チームを拡充する予定だ。今回のラウンドを主導したのは、ベンチャーキャピタルのPoint72 Venturesだ。Deep 6は、フォーブスがAI分野で優れた実績をあげた企業50社を選出する「AI 50」ランキングに選出された。

編集=上田裕資

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