引退後、何をするのか──巻誠一郎が語った、セカンドキャリアへの思い 


発表から1年後の引退試合。「誰かのために」を形とする舞台

僕自身いきなり辞めてしまったので、生の声をサポーターの皆さんに伝えず引退してしまいました。引退のタイミングで出来なかった感謝の気持ちを伝えることが出来たらと思っています。もちろん言葉で伝えたいと思いますが、言葉以外のもので伝えるために色んな人達のサポートを受けながら形にしようと進めています。

子供たちへの思いもあります。地震の影響で自分の夢を追いかけることを諦めざるを得なかった子達も多々いました。その中でJリーグの選手が訪問することでまた夢を持つことを始めた子もいました。

地震を怖かった、嫌だったという思いで終わらせるのではなく、地震があったからこそ選手たちに会え、新しい目標が出来たという良い思い出に変わったというメッセージもたくさんもらいました。そういう子供たちにもう1度夢を持ってもらえるよう「本物を見せる」ためにMakuakeを行って、出来る限り招待したいと思っています。

そしてもう1つ、トップアスリートには発信力があります。引退試合で来てくださるアスリートの皆さんにはもう一度熊本のことを考えてもらうことで何かを考えるきっかけにして欲しいと思います。来てもらった選手たちにもいろいろ持ち帰ってもらい、サッカーの価値を作ってもらいたい。そんな思いを持ちながら、いま準備を進めています。

自分の価値の在り方は海外に行ったことで変わりました。サッカー選手の価値=サッカーの上手さかといえば、そうではない。クラブを象徴する選手も、サッカーだけ上手くては高い価値は築けません。

発信力があって、行動力があって、どれくらい社会、サポーター、人と繋がれるか。そういう存在がいても良いんじゃないか。自分なりの価値を作っても良いんじゃないか。そう考えた時に自分のパーソナリティーを一番発揮出来る場所が熊本でした。



サッカーは本当に素晴らしいと思うんですよ。災害が起こって避難所で自分の心が開けない人たちは多くいます。サッカーの素晴らしいところはボール一個で繋がることが出来ることです。足元にボールを転がしてあげるだけで必ず帰ってきます。ボール一個で心を垣間見ることが出来る。それはスポーツの最大の価値であって、最大の魅力だと思います。

そのことをもう少し世の中の人に伝えたいですし、その価値は必ずスポーツビジネスにおいてキーワードになってくると思います。世の中に色んなコンテンツが出てくる中、スポーツが生き延びていくためにはそういう価値を大切にしていかなくてはいけないと思います。

文=新川諒 写真=小田駿一

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