──「友達ができない」という問題を解決するサービスを作ったわけですね。
そうですね。しかし、このサービスも登録していただけるユーザーは多くいましたが、チャットが開始しても誰も喋りませんでした。話そうと努力してもらうために「3日間話さないと『転校』になります」というルールを設けましたが、3日後には10人いたクラスが1人になることもありました(笑)。
──この失敗要因はどこにあったのでしょうか?
「Class」が上手くいかなかった理由としては2つあったと思っています。1つは「中高生時代の記憶と現実が乖離していた」ことです。多くの人にとって中高生の時にクラスで過ごした時間は「楽しかったな」という良い思い出だと思うのですが、実際に高校生の頃にタイムスリップしたとしたらどうでしょうか。
年を取って振り返るからこそ楽しい訳で、その当時は最高だなんて感じていなかったように思います。それがネット上で起こってしまい、中高生時代の美しい記憶のおかげで初期ユーザーは数万人も集まりましたが、いざ中高生時代と同じ状況に置かれてみると意外に面白くありませんでした。
もう1つの理由として、「オンラインなのでいつでも辞められる」ことだと思います。現実の教室とは異なり、誰かと話す努力をしなくても良い。オンラインとリアルな教室とでは、提供できる場の価値が全然違っていました。
──ビジョンでは面白いサービスが、実際にやってみるとあまり面白くなかったということでしょうか?
その通りです。ビジョンありき過ぎて、結局、これも誰かの問題にしっかりフォーカスが当たっていませんでした。プロダクトアウトが強過ぎた、とも言い換えられます。世間でよく言われている、「この問題を解決してくれるなら絶対お金を払います」というサービス以外やってはいけない、ということをこれらの失敗を通じて身をもって体験しました。
──その失敗が現在のTECH::CAMP事業につながっているんでしょうか?
そうです。プログラミングの勉強を独学で始めたけれど、あまりの大変さに挫折してしまう、というリアルな問題を抱えた人をたくさん知っていました。そんな問題を抱えた人たちに、「1ヶ月でプログラミングが必ずできるようになるサービス」を出したら、10万円でも絶対支払っていただけるという確信がありました。そのような明確なニーズをイメージできるサービスであったからこそ、事業が上手く立ち上がったのだと思います。
これらの経験を経て、事業を作る際に守るべきフレームワークが私の中で出来ました。それは、「自分の得意分野をやること」「これから伸びる市場に手をつけること」「対価が明確であること」の3つです。
TECH::CAMPはその実体験から生まれたフレームワークをすべて満たしています。私自身、プログラミングは得意でしたし、プログラミング教育の需要は高まる一方です。また、サービスに対していただく対価も明確です。
様々な失敗を乗り越えてきたからこそ、今の事業・会社に繋がっていると思います。(第3回へ続く)