2度のサービス撤退を経て掴んだ成功の「フレームワーク」
──起業後、いくつかの失敗を経験されたとお聞きしています。
起業をして最初に作ったのは「log」というエンタメ記録サービスです。映画や音楽など、好きなものをユーザーが投稿し記録するというシステムです。
ちょうどその頃、フェイスブックが普及し、個人の人間関係がネット上で可視化できるようになりました。「それを越えるには次に何を可視化すればいいだろう?」と考えた時、「人の興味関心」ではないかという結論に至りました。
そこで、人の興味関心の中でも最も共有意欲の高いエンタメを全部記録でき、コミュニケーションをとれるサービスを作ろうと考えました。「人の興味関心」を一目見ればわかるような、そういう場所を作れたらフェイスブックを越えられると思いました。
──今振り返ると、失敗の要因はどこにあったのでしょうか?
記録ツールとしては成立しており、1週間で1000投稿していただける方もいましたが、コミュニケーションのサービスとしては機能していませんでした。ツールになってしまうとメディアとしての価値がなく、結果、誰も継続して使おうと思わなくなります。
コミュニケーションが生まれなかった理由は、リリースしてから気づいたのですが、「人はそもそも自分の興味関心を、赤の他人に話したいとは思っていない」ということです。
サービス立ち上げ時の私の中の仮説は、「興味関心が合えば赤の他人でもいきなり友達になれて、コミュニケーションが生まれる」というものでした。しかし、現実には、人はまず友人や同僚といった関係になってから、お互いの趣味を共有して盛り上がっていきます。その順番を履き違えていたため、コミュニケーションが生まれなかったのです。
──その後にも別のサービスを提供されていますね。
「Class」です。オンライン上でランダムに選ばれた同い年の男女10人が1カ月限定で同じクラスになり、交流をするというSNSです。
「log」の失敗の後、当時の共同創業者と六本木のカフェで「次の事業は、誰かの問題を解決するものにしよう」という話になり、「自分たちの問題って何だろう?」と考えた結果、「友達がいないことじゃない?」ということで意見が一致しました(笑)。
では、今までどうやって友達を作ってきたかと考えてみると、中高生時代はたまたま同じクラスだったからという理由で友達が出来ていたことを思い出しました。その体験から、「同い年だから今日から仲良くしてください」という状況に置かれだけで友達になれるという仮説を持ちました。その偶然の出会いをオンライン上でやれたらいいのでは、というアイデアから「Class」が生まれました。