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日清食品 代表取締役社長 安藤徳隆

CMは消費者に商品やサービスを知ってもらい、身近に、自分ごとに感じてもらうためのメッセージだ。知ってもらう理由を説明する見せ方でもよいし、商品名の連呼でも、綺麗な映像を見せるだけでもよい。

しかし「なんだこれ?」という意味不明さで消費者のマインドをあやつるものがある。日清食品のそれだ。限られた秒数の中で展開される独特の世界観は、周りに話さずにはいられない焦りのような感覚すら覚える。

日清食品を牽引する代表取締役社長 安藤徳隆(42)に聞いた。否、もとい。まずは理解不能と評されつつも気になって仕方がない、カップヌードルのCM「謎肉増量 篇」と、CM好感度日本一を獲得した人気シリーズの「HUNGRY DAYS ビビ 篇」をあらためて見ていただこう。

話は、それからだ。


ケイン・コスギに「快く引き受けていただいた」という展開がまったく理解不能な「謎肉増量 篇」。最後には謎肉が増量した事実とともにカップヌードルが脳裏に焼きつく。あの有名な“フレーズ”も関係各所にちゃんと許可をとったのだという。


人気のONE PIECEをモチーフに「ルフィ率いる‟麦わらの一味“が高校生活を送っていたら」というパラレルワールドを青春アニメで描くCM。原作者である尾田栄一郎にも許可をもらって実現、キャラクターデザインには窪之内英策を起用する力の入れ様。「登場キャラを探す」という別軸の消費者行動が発生した。(ナイショ・53人だそうです)

確実に印象に残る、というよりここまでこだわりを詰め込まれると、目先の奇をてらったものでないことを自然に感じさせる。

安藤徳隆はこう説明する。

「ターゲットである若い人たちは、まず『何だ?このCMは!』と感じれば、すぐに手元のスマホで調べますし、ウェブサイトやユーチューブでCMを繰り返し視聴する。ケインさんのCMで言えば、聞き覚えのある『21(トゥエンティーワン)』や、なぜ今『高輪ゲートウェイ』なのかと、突っ込みどころが多ければ多いほどSNSでの拡散力は高まっていく。

食品として、おいしく、安全・安心な商品であることは当然として、ブランドコミュニケーションによって話題を拡散できれば、店頭で商品を選ぶ際に商品のブランドが自然と想起される。お客さまとブランドの間に文脈を生み出し、“マインドシェア”を上げていくことを最も重視しています」

生理的に受け付けないものでない限り、ブランドとの接点が増えること、ブランドの情報にさらされることで消費者の共感度はアップしていくと語る安藤。カップヌードルのほかにも、行き着くところまで突き進み、もはや完全に吹っ切れている「日清焼そばU.F.O.」、「日清のどん兵衛」では某大ヒットドラマの雰囲気を踏襲したあまりにもかわいらしい“どんぎつね”、「日清ラ王」では天使のような子どもたちがきちんと話せていないまま展開が進むほっこり感──。

多種多様な日清食品のチャレンジングなCM群が、他の大手企業より少ない「出稿量」でも脳の記憶野にイメージを刻み込む。そして、彼らは、こういったブランドコミュニケーションのほぼ9割を、社内で設計しているという。

そんなことができるのか。

日清食品のトップであり、ブランディングのすべてに目を配る安藤徳隆に、同社のクリエーティブの秘密を聞くロングインタビュー。またとない機会だ。

文=坂元耕二 写真=平井敬治

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