ビジネス

2019.12.16 12:00

なんなんだこのCMは? 反響を生みドライブさせる日清食品の「すごい会議」


日清食品の次の60年は何が起きるのか


安藤:日清食品の商品は、食べておいしいのは当たり前。食には楽しさという要素が不可欠だと思っています。そして、こうした攻めのブランドコミュニケーションが展開できるのは、食の安全を担保する体制を築き上げているからこそ。食品会社としての大前提を踏まえた上で、面白くておいしいを目指しているんです。

F:日清食品には「日清10則」というものがあると聞いています。この行動規範が御社の開発やマーケティングにも生かされているのでしょうか。

安藤:行動規範は昔からあるのですが、時代の変化とともに内容を変える必要性があると考えています。現在の「日清10則」も、グローバル企業としての観点や、社会や環境の変化へ対応を考慮して2018年8月に改定したものです。

【 日清10則 】
1:ブランドオーナーシップを持て
2:ファーストエントリーとカテゴリーNo.1をめざせ
3:自ら想像し、他人に潰されるくらいなら、自ら破壊せよ
4:外部の英智を巻き込み、事業を加速させよ
5:純粋化した組織は弱い。特異性を取り込み、変化できるものが生き残る
6:知識と経験に胡座をかくな。自己研鑽なき者に未来はない
7:迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ
8:命令で人を動かすな。説明責任を果たし、納得させよ
9:不可能に挑戦し、ブレークスルーせよ
10:仕事を楽しむことも仕事である。それが成長を加速させる

※簡易的に項目のみ記述。社員に配られたカードにはその解釈なども記されている

安藤:例えば、10番は日清食品イズムをよく表しています。仕事をいかに面白くできるか、楽しめるか、周りを巻き込めるか。挑戦を楽しみながら、もっと工夫する余地がないのかを考えていかないと、世の中を面白くすることはできません。

創業者の安藤百福は『仕事を戯れ化せよ。』という言葉を遺しましたが、その創業者の思考のプロセスを分析して、自分たちの言葉に置き換えたのが、この10番なんです。

F:偉人の言葉は、深いが故にハードルも高い。それを解釈し直し、自分たちの行動指針にと。日清食品イズムをまとったみなさんは、次に何を目指すのでしょうか。

日清食品社長安藤徳隆さんのポートレート

安藤:今や世界食となったインスタントラーメンですが、これは60年以上前に生まれたイノベーションです。逆に言えば、我々は“60年間イノベーションを生み出していない”ということでもあります。自戒も込めて、「これでいいの? このままでは、やばくないか?」と社員に言っています。

日清食品は、食の分野に次々とイノベーションを起こす会社であり続けなければならない。いつまでもひとつのビジネスを追っているだけではダメなんです。私たちは今、新しい食文化を生み出すプラットフォーマーを目指しています。これからの60年、日清食品はまったく新しい姿に生まれ変わらなければなりません。

F:何か仕掛けてくれそうな予感がします。楽しみにしております。

ロングインタビューは予定時間のギリギリまで続けられた。クリエーティブとその施策について聞くはずが、背景から心意気まで、幅広く日清食品について理解することができた。多忙な安藤に1時間の拘束をお願いした甲斐があったというものだ。

文=坂元耕二 写真=平井敬治

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