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2019.12.16 12:00

なんなんだこのCMは? 反響を生みドライブさせる日清食品の「すごい会議」


その正体。名前は普通だがすごい会議「社長定例会議」


F:御社には『カップヌードルをぶっつぶせ!』というスローガンがあります。新しい試みを促す劇薬に近い表現ですが、その浸透が多くの施策を成功させています。もう反対やネガティブな声は社内にはない?

安藤:社員にはないですね。むしろ『もっとやろう』『今やらないと』という勢いのほうが強くなっています。ただ、できあがったものは最後に役員会を通さないといけないので、そこが山場になります(笑)。年配の役員から「理解できない」と怒られながらも、常に新しいコミュニケーションを模索しています。

F:結果を出していますから。

安藤:社員に対しては、どんどんアイデアを出して、もっとおかしなこと、変なことやろうと発破をかけています。社長である自分が責任を取るから、好き勝手に発想していいと。

私の仕事は、さまざまなアイデアをきちんと整えていくこと。ブランドとの結びつきをしっかりと考え、日清食品らしいトーン&マナーを管理しなければ、どんなにユニークなアイデアでも、モノが売れるブランドコミュニケーションとして成立しないからです。

日清食品社長の安藤徳隆さん

F:基本的な疑問ですが、マーケテイングの方向性や具体的な企画案などは、まずどのようにして生まれるのでしょうか。およそ、ケインさんのCMのような突出した内容は、その起点すら想像しにくいものがあります。

安藤:ブランドコミュニケーションに関しては、私と宣伝部で週一回の定例会議を行っているのですが、即興的にその場でアイデアを考え、どんどん決めていってしまいます。案件を持ち帰ることはありません。

会議はすべてオープンにしていて、若手のマーケターや営業の担当者など、他部署の人間も自由に参加して議論に加わる。どうやってアイデアが生まれ、施策として組み立てられていくか、全てのプロセスを見せているんです。

F:いわば重要な社長定例会議に、来たい人はどうぞと。

安藤:そうです。例えば、カップヌードルのCM「謎肉増量 篇」の場合、消費増税にともなう消費マインド低下に対する施策として、商品面ではカップヌードルの謎肉を増量することになった。そこで、CMは「増量する」というイメージをどんどんと広げたものにしようと。

会議の場で、私があおり役になりながら、こういうアイデアはどうだろうか、いやそれくらいじゃ物足りない、もっともっと!と(笑)。毎週毎週、これを繰り返しながら作り上げているんです。

F:そうした会議は、宣伝に関するものだけですか。

安藤:マーケティング部とも定例で会議しています。週に1回、開発中の商品をざっと並べ、その場でネーミングやパッケージデザインを判断し、プロモーション施策を組み立てていきます。どういう流れで商品ができあがっていくのか、社長である私やブランドマネジャーがどういうところにこだわっているのか、具体的な意思決定のプロセスを生で見せている。当社は、こういったオープンな会議が名物なんですよ(笑)。

F:安藤さんご自身が現場の最前線に入っている?

安藤:私は開発であれ、生産であれ、全て現場に入ります。一般的な企業なら、自分のアイデアが社長に届いているかどうか、なかなか分かりにくいと思います。

しかし日清食品では、少なくともオープンな会議が毎週あるわけですから、必ず「社長と顔を合わせる」、そしてアイデアが面白ければ「即採用」される、営業部門にもその場で「この施策を実施する」と伝えます。全ての組織フラットにして横串を通していかなければ、実行のスピードは上がりません。

日清食品の社長定例会議の様子
「すごい会議」その様子。大きなテーブルを商品が埋め尽くすことも。ブランドマネジャーの周りをさらに若手が取り囲む。そして、案件は絶対に持ち帰らず、デザインやプロモーション施策に至るまで、その場で答えを出して全てを組み上げる。

F:日清食品の全てがそうした定例会議で決まっていくのですね。

安藤:そこから生まれる勢い、スピード感を大事にしています。以前、『パンケーキ食べたい』というフレーズが流行ったとき、「日清ラ王」のCMに取り入ることになったのですが、宣伝部との定例会議で出席者全員に『パンケーキ以外、何食べたい?』って聞いていくんです。もちろん、他部署の若い社員にも。

F:少しビビりますね。

安藤:大喜利ですね。ある社員が『マンホール!』と言ったとき、会議の場で笑いが起こったので、即採用しました。会議の場で爆笑が起これば、お客さまにもきっと楽しんでもらえるはずですから。この勢いやスピードは、責任を取ることができる私が現場にいないと生まれてこないと思っています。

F:鉄が熱いうちに打たれている感じが伝わってきます。
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文=坂元耕二 写真=平井敬治

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