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文化的な生活のための論考

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人生の岐路に立っていると思っていたら、意外とみんなそうだった。

30代中盤に差し掛かり、充実する毎日を送りながらも、ふと立ち止まって振り返ると、仕事もプライベートも人並み以上にいろいろあった気がする。という私の話に「実は自分も…」と同意する人のなんと多いことか。

生き方も働き方も個性が尊重されていて、「自分らしさ」を享受できる。でも、そこはかとない寂しさや、ふとしたとき喉元に詰まる一抹の不安がある。

みんなそうならば、語り合おう。たしかそんな動機だった。私たちが、スナック「分かれ道」を始めたのは。

今日のあなたも「分かれ道」

そもそも最近、スナック運営が流行っている。起業するのではなく、営業時間外の店舗を一時的に借りて知人らを呼び、飲み会をする。あくまで個人レベルの延長だ。それを「スナック」というシチュエーションに紐づけて楽しむ。

こうした従来の飲み会スタイルおよび「場」の拡張は、レンタルスペース市場の活性化も要因として挙げられる。店舗側は場所を貸し出し、営業時間外でも副次的な収入を得られる。

私たちが今回スナックをするにあたり、空きスペースの時間貸し仲介サイト「スペースマーケット」で借りたのは、銀座のコリドー街近くの店舗。カラオケ付きで、席数は50ほど。オープンキッチンで開放感があり、食器もカップも鍋も店舗のものをそのまま使えた。酒類は通販サイトで仕入れ、当日店舗着で発送。つまみ類や簡単なお通しは、その場でちゃちゃっと用意した。

集客にはフェイスブックのイベントページを作成し、3人のママの個人アカウントで「告知」した。当日少しバタついたくらいで、事前準備などはほとんど手間がかからなかった。

スナック 分かれ道

開店と同時に予想以上の人たちが集まり、店内は一瞬で満席になった。

異様な光景だった。私の知り合いが、私の知らない誰かと話している。楽しそうにお酒を飲み、肩を組んで米津玄師を歌っている。「規模のでかい家飲み」、もしくは「手軽な大人の学園祭」。サブタイトルをつけるとしたら、そんなところだろう。

3人のママが共通軸となり、人々が自由に交流していく。スナックという場の設定も功を奏し、テーブルを超えて会話とマイクが引き継がれていった。

新聞社やテレビ局の記者、プロデューサー、ウェブメディアのライター、大企業の部長職から営業、学生インターンまで。メディア業界の人が多めだったが、当日ふらっと飛び入りで来た「バーホッパー」(バーを1件ずつハシゴする人)の女性もいて、彼女は1杯どころか閉店までずっとカウンターで立ち飲みしていた。

閉店まで満席が続いた。最後は我らママたちで熱唱し、2回目の開催を約束して終わった。

ポスト居酒屋コミュニケーション

そのまま私は、TBSラジオの人気番組「文化系トークラジオLIFE」にお邪魔した。テーマは「いま友達と集まるならどこですか? ~ポスト居酒屋コミュニケーションの時代」。集まる場やコミュニケーションの変化について語る回だった。

とにかく居酒屋一択で集まっていた時代は終わり、仕事でも家庭でもないサードプレイス的な居場所が必要とされている昨今では、コミュニティーの「場」も多様化している。

キャンプやサウナなど、以前からあるものが“場”として再定義されている場合もあれば、アイドルや俳優ファンなどによる「推し活動」には、ラブホテルやカラオケボックスなどが本来の機能とは別の文脈で──ライブ上映会場やプライベートシアターとして──使われる。そしてレンタルスペースの普及によってさらに多くの選択肢が生まれているという流れで、まさにスナックの流行についても言及された。

文=川口 あい

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