鹿児島と芋焼酎 切っても切り離せない「土」の関係


県内を車で走ると、台風一過か、と思うほどに崖崩れの補修工事に出会います。シラスは土というより砂のようなサラサラしたものなので、とても崩れやすく、雨が降ると地盤が緩みやすいのです。

このシラスは今から3万年前に爆発した姶良火山の火砕流のことです。この時の噴火はまさに「地球規模」の大爆発で、火山灰は、はるか2500km離れた東北地方までたどりつき、東京には約10cm積もったと言われています。その噴出量から想像するに、噴煙は天を覆い、鹿児島は暗闇になったとのではないかと考えます。

これは私の想像ですが、古事記で、「太陽神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天谷岩(あまやのいわと)と隠れた時に、世の中は真っ暗になった」というくだりがあります。日食という説もありますが、年代やそれが起こった場所、日食による暗闇の長さはわずか数分ということを鑑みると、この噴火のことではないかと、勝手に妄想しております。

姶良火山が噴火したイメージ
姶良火山が噴火したイメージ(出展:霧島ジオパーク推進連絡協議会)

このシラスは、稲作には不向きです。米を作るためには、養分があり、水を通さない土、つまり粘土質が必要だからです。鹿児島県の52%がシラスに覆われていることを鑑みると、古(いにしえ)の時代、この土地の人はどうやって暮らしていたのでしょうか。

養分がすくなく、乾燥した土でも生育するムギやアワやヒエ、もしくは、ソバは、この土地でも生育が可能でしょう。しかし、鹿児島県は日本有数の台風県。つまり、強い風がふけば、土の上にでている作物はなぎ倒されてしまいます。

火砕流の「ミネラル」が効く

勘の良い方はお気づきかと思いますが、そうです。だから、風の影響を受けにくい地面の中で育つ「芋」を造るようになったのです。

芋は「じゃがいも」や「里芋」など種類がありますが、中でも「さつまいも」は多くのミネラルを要します。火砕流であるシラスには大量のミネラルが含まれており、良質の「さつまいも」を育てることができるのです。

芋焼酎に使われる鹿児島のさつまいも
芋焼酎に使われる県内で収穫されたさつまいも

お酒は、古来から私たちにとって生活の疲れを癒す存在であり、楽しみでした。そんなワケで鹿児島県のみなさんは「さつまいも」を原料にしたお酒、つまり、芋焼酎を楽しまれたのです。

ちなみに、私が鹿児島で最初に感じた違和感は建物の多くに石が使われていたことでした。古いものには、びっしりと苔がついていました。よく見るとそれは水分を吸収しやすい溶岩石だったのです。そのことから、この地は、火砕流がふんだんにあると思ったのです。

鹿児島県に行かれたら、大地を構成している「土」をみて、ああ、この土がおいしい「さつまいも」を育てるのだな、とイメージし「芋焼酎」をお楽しみいただいてはいかがでしょうか。

文=南雲朋美

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